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ユーザーは年々倍増、誰でも「キャス主」に ツイキャスが目指すリアルタイムコミュニケーション(2/2 ページ)

» 2013年07月05日 09時30分 公開
[山崎春奈,ITmedia]
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転機は「3月11日」

 赤松さんがツイキャスの前に手がけていたのは、ラジコンをインターネット経由で遠隔操作する「Joker Racer」というサービス。Webカメラの映像を確認しながらブラウザでラジコンを操作する仕組みに必要な機能が「iPhoneに全部入ってる」と思い立ち、それまで利用していた技術を応用し、個人向けライブ配信のサービスを開始した。iPhoneアプリの制作は2本目で、「練習のような気持ち」で作ったアプリだった。「ここまで流行るのは予想外だった」と言う。

 ユーザーが増えていく中、個人が主体となるサービスを運用していくには、機能開発やインフラの強化だけでなく、クレーム対応や法的に問題のある動画の監視や報告も必要になる。若年ユーザーによって想像の“斜め上”の文化が作られ、法律に抵触するような配信などで警察とやりとりする機会もあり「面倒だなと思うことも多かった。今振り返ると正直どうして続けられたのか分からない」と言う。

 転機となったのは11年3月に起きた東日本大震災。Ustreamやニコニコ生放送がニュースや会見の情報を提供する中、「自分とツイキャスがやるべきこと、できることが分からない」ことに、停車して閉じ込められた新幹線の中でショックを受けた。震災直後は当然トラフィックが激減していた。

 「当たり前ですよね、ツイキャスなんてする空気じゃない。でもみんな、ソーシャルゲームはポチポチしていたはずなんですよ。くそー、ゲームに負けた、って悔しかったですね。社会が揺らぐような緊急事態に、社会インフラにも小さな娯楽にもなれないのは虚しい、と思いました」

「3年経ってやっと腹をくくれた」

photo ツイキャスアプリのアイコンのクッション。まだ試作品だが今後ユーザーにプレゼントする予定

 資金調達を果たした同社だが、今年の春までサービス自体を売りに出そうと考えていたと言う。

 「実際いいお声かけをいただいたのですが、話が具体的になりかけたところで、これでやめていいのかな? と。もう少し自分の手で大きくしたい、どこまでいけるか試してみたい、270万人のユーザーと遊びたい気持ちが勝ちました。3年経って、やっと腹をくくれたんですよね」

 現在、開発体制は赤松さん含め3人。「やりたいことはあるがなかなか手が回らない状態。調達した資金はインフラや人員の増強に当てる」。

 「いい意味でライブ配信にはそこまで思い入れはない」と話す赤松さんが目指すのは、友達同士の付き合いを可視化しコミュニケーションを促進すると共に、個人の才能や能力を発揮できるプラットフォーム。配信者とサポーター(視聴者)をつなぐ「コミュニティ」機能も実装した

 自身が好きな配信は、山形のシンガーソングライターによるギターの弾き語りの中継という。震災前からのユーザーで、これまでの配信は500回以上。じわじわとファンを増やしている。

 「同じサービスを提供してもいろいろな使い方をするユーザーがいる。こちらから使い方を示したり特定ユーザーを取り上げたりせず、うまく距離を置いて、外からコミュニケーションの質を高めていくサポートをしたい」。

 リアルタイムのコミュニケーションの場を作る意味で、最大の競合はLINEだという。「ライブ配信は配信する人も見る人も時間があるのが自明なので、既読マークに左右されずに“暇な人マッチング”ができるんですよ」。動画配信は「言葉がいらないサービスなのでまだまだ成長する余地はある」と海外でのユーザー拡大も狙う。「見てろよLINE、と思ってます」。

 ツイキャスの次の一手は「“新学期ショック”で懲りたので、夏休み」。チームで開発ができる体制を整えた後、第2弾の資金調達も視野に入れている。

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