ITmedia NEWS > ネットの話題 >

「もっと自由に使える素材を」――“やせ我慢”でも無料を貫く写真素材サイト「足成」(1/2 ページ)

» 2013年08月02日 09時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 写真素材 足成

 商用・個人利用問わず、完全無料、著作権表記フリー。人物モデル写真の肖像権もクリア済み――そんな写真素材サイト「写真素材 足成」が、8月に7周年を迎える。足成誕生以前は、無料・著作権表記が不要の写真素材サイトはほとんどなく、肖像権クリア済みのモデル写真を無料で使えるサイトは皆無。「もっと自由に使える素材を提供したい」と、前人未踏の境地を開拓してきた。

 ほぼ毎日更新を続け、これまで公開した写真は7万6000点超、利用者は月間約20万人。写真は個人ブログやコラム・ニュースサイトなどWeb上だけでなくテレビや紙媒体にも利用され、広がりは増す一方だ。収入源は広告バナーのみで売り上げはごくわずか。運営の負担は増しているが「やせ我慢」で無料を貫いていると、運営元のWebデザイン会社・エイムデザインの日野諭社長は笑う。


画像
画像
画像

高額だった写真素材 「もっと自由に使える素材を」

画像 日野社長

 日野社長は04年に脱サラし、Webデザイナーとして独立。05年に法人化してエイムデザインを創業した。足成は、Webデザイナー仲間とともに企画し、06年にオープンしたサイトだ。企画の発端は、Webデザインに必要な写真が高くて困っていたことだった。

 当時、素材サイトの相場は写真1枚2000円〜5000円程度。納品する商品に入れる写真ならともかく、提案時のイメージラフに入れる仮の写真にまでお金がかかる状況を何とかしたいと、趣味で撮りためてきた写真を共有するサイトを発案。サイト構築のノウハウ蓄積のためにも、サイトを一般公開し、多くの人に利用してもらおうと考えた。

 500〜1000円程度の低価格で販売することも検討したが、「どうせなら、もっと自由に使える素材を提供したい」と完全無料・著作権フリーに挑戦。低価格な素材サイトが勃興しつつあった当時、「誰もやっていないことをやりたい」といった思いや、「無料にすることで、圧倒的な“場”が構築できれば、ゆくゆくは楽しいことができるだろう」という期待もあったという。

 06年8月に写真素材とブログテンプレートを無償公開する「素材屋 足成」をオープン。08年7月に写真素材に特化して刷新し、09年5月に肖像権をクリアした人物写真素材の掲載をスタートした。

 無料の素材サイトで、肖像権をクリアしたモデル写真を公開するのは日本初。「誰もやっていないことをやりたかったから」と、新たな境地に踏み出した。サイトでアマチュアモデルを募集し、ロケを行ってさまざまなシチュエーションの写真を撮影。これまでに8000枚以上公開している。

人気は人物や時事ネタ テレビや雑誌で活用も

 素材写真は、自然の風景や動物など、1枚で楽しめる美しい写真を用意している一方、PCのキーボードを撮った写真や、スーツ姿の人同士が握手をしている写真、結婚式中のカップルの後ろ姿など、ニュースやコラム記事で使い勝手が良さそうな写真もラインアップ。Webサイトだけでなくテレビドラマの小道具や雑誌記事、チラシ、看板など、さまざまなメディアで使われている。


画像画像画像 足成の写真が使われているサイトの例

 最も使われやすいのは人物写真だ。スーツ姿の女性の写真が就職活動関連の記事に使われたり、男性がiPadを触っている写真がIT関連の記事に利用されたりなど、ニュースサイトやコラムサイトで毎日のように足成の写真が使われている。時事性の高い写真も意識して提供しており、例えば、金環日食を撮影後すぐに公開したところ、多くのメディアに利用されたという。「ニュースを書きたいが肝心の写真がない……という時に使える素材サイトを目指したい」と日野さんは話す。

 写真素材の活躍の場が広がる一方で、「良くない使われ方」が増えてきたのが悩みだ。素材写真をそのままプリントして販売されてしまったり、モデルの写真が情報商材や出会い系サイトに使われるなど、規約・モラルに違反した使われ方が目立ってきたという。「こちらで把握したものは差し止めを要請したり、応じていただけなければ警察に通報している」が、少人数で運営していることもあり、すべてに対応するのは難しい。

 今後は、写真によってはクレジット明記を求めたり、モデルの顔が写らない写真を増やすなど、問題のある使われ方を抑止できるような仕組みを検討していく。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.