2年ほど前に偶然、横山光輝作品の権利元である光プロダクションとのつてができ、温めてきた企画を光プロにぶつけるチャンスを得た。原さんは、横山作品への愛を詰め込んだ大量の資料を光プロに持ち込み、「横山作品でチャットスタンプを作らせてほしい」と申し出たのだ。
A4で全420ページにもわたる資料は、今思うと「狂気に満ちていた」。横山作品から原さんがピックアップした「珠玉のコマ」を詰め込んだ資料で、三国志から選んだ4100コマを「魏」「呉」「蜀」の国別、「孔明」「孟獲」など武将別に分類したものに加え、「鉄人28号」「水滸伝」「バビル2世」「魔法使いサリー」など、三国志以外の横山作品から選んだコマも大量に添付した。
分厚い資料を手に原さんは、光プロの担当者にこう訴えかけた。「1つのコマで面白さが伝わる横山光輝作品は、チャットスタンプにたいへん向いています。今流行しているチャットアプリに横山先生のコンテンツを出すことで、若い世代に横山光輝作品の魅力を伝えたいです!」
その愛は担当者に伝わり、企画にゴーサインが出た。「これまで持ち込まれた中で三本の指に入るすごい企画だ、と喜んでいただけました」
LINEスタンプは1コンテンツ当たり40個という制限があるが、候補のコマは4100。100分の1に絞らなくてはならない。「ファンは本当にこのスタンプを欲しがるだろうか」と問いかけながら、ファン目線で絞り込んでいった。ネット掲示板などで人気のコマはできるだけ入れるよう配慮しつつ、武将やセリフ、シチュエーションのかぶりなどを省いていった。
「待てあわてるな これは孔明の罠だ」などネットで人気のコマは迷わず採用。横山作品を代表するセリフ「げえっ」「むむむ」も「絶対に外せない」と考えたが、多くのキャラが発しているセリフでもあり、1つずつに絞る必要があった。悩んだ末、「げえっ」は、せりふが大きく手書きされている曹操のコマを、「むむむ」は、「なにがむむむだ!」との掛け合いでおなじみの馬超のコマを選んだ。
ネットでの人気やスタンプとしての使い勝手を考え、無名のキャラも多数採用した。「温州蜜柑でございます」と曹操にみかんを差し出す使用人、都に出るべきだと宣言する袁紹の隣で「ウム!」とうなずくだけの部下などだ。
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