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» 2014年03月17日 10時20分 公開

「ヤバいぐらいの手応え」 300万DLの無料漫画アプリ「マンガボックス」樹林伸編集長に聞く、ビジネスの展望と「夢」 (2/4)

[岡田有花,ITmedia]

 「漫画は正直、お金がかかるんです」。樹林さんは打ち明ける。「ドラクエで大当たりしたころ創刊されたスクウェア・エニックスの『少年ガンガン』でさえ10年ぐらい赤字が続き、『鋼の錬金術師』が大爆発してペイした。そういうリスクを覚悟しないと成立しない世界です」

 力のある漫画を掲載するには、編集者や出版社との関係が大事だ。「作家と会議室でミーティングし、お金を支払えば漫画ができると誤解している人も多いが、作家と編集者や出版社との関係を理解していない。漫画は9割が育成の仕事。種をまいて畑を耕し、肥料や水をあげるプロの編集者が必要なんです」

 DeNAからの話に乗った第一の理由は、その資本力や規模が、大手出版社と対等に交渉したり、中長期的に漫画家を育成するのに十分と判断したためだ。「DeNAにはMobageで蓄積した内部留保が相当あり、あわててマネタイズに向かうのではない体力を持っているだろう。経営体制もしっかりしていて動きが速い」

無料であっても、質が高くないと勝負できない

画像 樹林さんは、校了紙やネームのデータを自宅NASとクラウドに集約させ、外出中もiPadでチェックしているという。「世界中どこでも仕事ができます。ここ数年は、紙で校了紙を見たことがない」

 約1年の準備期間をかけ、講談社、小学館を口説き落として提携。各出版社が社内にマンガボックス用の編集部をかかえて作品を提供しており、人気漫画のスピンオフ作や紙の雑誌との同時掲載作などをそろえた。

 トップクラスの漫画編集者のマンガボックスへの引き抜きにも成功。常駐5人、非常駐3人・計8人の編集者をかかえ、新たな作品を生み出している。編集部のメールアドレスや住所を公開し、持ち込み作品を歓迎。新人発掘・育成にも力を入れる。

 トップクラスの編集者をそろえ、漫画の質にこだわったのは、「メジャーレベルのコンテンツを用意しないと勝負にならない」と考えたためだ。「コンテンツビジネスは、ユーザーの時間の奪い合い。ソーシャルゲームなどほかの娯楽より高いレベルの娯楽を提供しなくてはならないと考えると、メジャーのトップレベルの作品が必要だ」

 雑誌掲載作などを出版社が提供するメリットは、百万単位の読者を新規に獲得でき、雑誌や単行本の売り上げアップを期待できること。また、雑誌を新創刊する際にマンガボックスにも作品を掲載して雑誌の認知を高めたり、休刊誌の作品をマンガボックスに引き取ることもできる。「漫画界に対する貢献が一番の狙いだ」と樹林さんは言う。

一作当たれば投資回収できる

 編集者を雇い、新人を育て、作品を無料配信する――今はコストが先行しており、収益化はこれからだ。とはいえ、コンテンツ制作にかかるのは基本的に原稿料のみ。出版社と同水準の原稿料を支払っているが、印刷代もかからず、サーバコストなどを含めても「持ち出しているコストは大型のソーシャルゲームを作るよりはるかに安い」という。

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