オープンデータはjig.jpの福野さんからの提案だった。福野さんが10年、W3C世界会議に参加した際、Webの生みの親、ティム・バーナーズ・リー氏がオープンデータについて熱く語るのを聞き、「日本もやらないとまずいのでは」と考えた。
福野さんは鯖江市にオープンデータ化を訴えようと、10年12月、W3Cの日本総責任者とともに牧野市長を訪問。市長にオープンデータの必要性を訴えたところ、その場で推進が決まったという。「市長が即決してくれて、驚きました」(福野さん)
市がこれまでに公開したデータは、「公衆トイレ情報」「AED情報」「道路工事情報」など40近く。鯖江市政策経営部情報統括監(CIO)の牧田泰一さんが中心となって市役所の各部署や消防署などからデータを収集し、XML/RDF化して公開してきた。コミュニティバスの位置情報など、APIとして公開したデータもある。
どのデータなら出せるか、何のために出すのか――迷いながら進めてきたと、牧田さんは打ち明ける。「公務員は『間違ってはいけない』と教育される。前例のないことに抵抗はあったが、市長の命令なので、権限の範囲内で少しずつ挑戦している」(牧田さん)
取り組みを進めるにつれ、意識も変わってきたという。「間違ってはいけない分野は当然あるが、そうでない分野もあると最近は思っている。新規性のある分野は挑戦しないと次の展開が見込めない」(牧田さん)
牧田さんが市のサイトでデータを公開するとすぐ、福野さんがWebアプリを開発して公開。福野さんが作ったアプリは、公衆トイレまでの徒歩ルートを表示するアプリ、コミュニティバスのGPS情報から、バスの現在地が分かるアプリなど、約80にのぼる。
福野さんと牧田さんの取り組みは、オープンデータ関連イベントで賞を受賞したり、新聞やテレビなどの取材が相次ぐなど外部からの評価が高まっている。政府が昨年6月に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」がオープンデータの推進をうたったことがきっかけとなり、地方議員や行政関係者の視察も次々に訪れているという。
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