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ソニーなぜまた巨額赤字? スマホ不振、中国メーカー台頭響く

» 2014年09月17日 19時56分 公開
[ITmedia]
photo 業績見通しを説明する平井社長

 「このような厳しい結果になったことを大変重く受け止めている」──ソニーの平井一夫社長は9月17日、2014年度(2015年3月期)の連結最終損益見通しが2300億円の赤字になったことを受け、今後の方針を説明した。原因となったモバイル事業では、安価な中国メーカーの台頭などに対応し、スマートフォンの普及モデルを絞り込み、高付加価値モデルへと集中。規模を追う路線から、安定して収益を見込める戦略に転換する。

 業績悪化を受け、今期は1958年の同社上場来初となる無配に転落する。モバイル事業子会社のソニーモバイルコミュニケーションズは従業員の15%にあたる1000人程度の人員削減に踏み切る。平井社長は「今年度に構造改革をやり切り、業績を回復させることが経営陣の務めだ」として自身の退任などは否定した。

 前期も1283億円の最終赤字だった同社は、2期連続で巨額の赤字を計上する見通しになった。モバイル事業の方向転換など構造改革を進め、「安定した収益基盤の上で、驚きと喜びをもたらす新しいソニーの実現を確信している」と平井社長は力を込めるが、韓国Samsung Electronicsですら失速する厳しい市場環境の中、先行きはまだ不透明だ。

モバイル事業の収益性低下でのれん代を一括処理

 巨額赤字の原因は、2012年にSony Ericsson Mobile Communications(現ソニーモバイルコミュニケーションズ)の子会社化が完了した際に生じた営業権(のれん代)だ。

 同社の公正価値は14億ユーロだったが、6億ユーロの債務超過だったため、合計20億ユーロについて、営業権13億ユーロと特許など無形固定資産7億ユーロとして計上した。ソニーは平均8年間で営業権を償却している。

photo のれん代についての説明

 だが今年4〜6月期、モバイル事業が27億円の営業赤字を計上。今期のスマートフォン販売目標も5000万台から4300万台に引き下げた。

 平井社長は「中国系スマートフォンメーカーの躍進など競争環境が厳しく、普及モデルを中心に台数見通しを引き下げた」と説明する。Xiaomiなど、中国のAndroidスマートフォンメーカーの成長は著しい。米調査会社のStrategy Analyticsによると、Xiaomiは4〜6月期に1510万台を出荷し、Lenovoに次ぐ世界5位に浮上。Xiaomiの出荷台数は1年で3倍以上に急成長している。

 これを受け、ソニーはモバイル事業の中期計画を見直し、売上高の拡大を目指してきた従来路線から、安定的に収益が見込める形への転換を決めた。

 具体的には、(1)地域展開は高い収益性を見込める地域に集中し、競合状況などから収益性が乏しい地域は見直す、(2)ソニーの技術を詰め込んだ高付加価値モデルに集中し、採算性の厳しい普及モデルは絞り込む、(3)ソニーモバイルコミュニケーションズを今期中に構造改革し、15%の人員削減──など。

 新しい中期計画では、収益性を改善することで黒字を見込んでいるが、ソニーモバイルの営業権について「新計画による公正価値が買収当時の公正価値を大きく下回るため、減損が必要になった」(吉田憲一郎CFO)。子会社化時と比べ、円安傾向から1800億円に上っていた残りの営業権の一括処理を迫られ、巨額の赤字を計上する見通しになった。のれん代の減損処理のため現金支出は発生していないが、配当の見送りも決めた。

 今回の業績予想の修正は減損分についてのみで、構造改革費用などは含まれておらず、さらに赤字額が膨らむ可能性もある。今後の見通しは中間決算の発表時に説明するとしている。

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