ドワンゴが定番の電子書籍ビューワーアプリ「i文庫」と、読書履歴管理サービス「読書メーター」を買収した。同社は両サービスの買収を契機に、Amazonの「Kindle」など強力なライバルがひしめく電子書籍市場に挑戦し、新基軸の電子書籍サービスを構築する構えだ。
「Kindleに対抗するのは難しい」――同社の川上量生会長は言う。「閲覧ソフトの質でKindleに勝つことは最低条件で、さらに付加的な機能を付ける必要がある。そのためのブーストとして、一番の閲覧ソフトと、一番の書籍レビューサイトを買収した」。
ドワンゴは2012年に電子書籍ビジネスに本格参入。「ニコニコ静画」(電子書籍)でコミックやライトノベルなどを販売してきたが、ここに来て電子書籍事業にさらに力を入れ始めた。なぜ今、電子書籍に注力するのか。KADOKAWAとの統合がきっかけの1つだと川上会長は言う。
「出版(KADOKAWA)とIT企業(ドワンゴ)でシナジーを出すめには、KADOKAWAの電子書籍サービス『BOOKWALKER』にもっと競争力を持たせ、強くするのが重要。やる以上は、KindleやiBookの劣化コピーのような存在ではなく、日本の他の電子書籍リーダーなどとも違ったレベルのものを出したい」
「自分がほしい電子書籍リーダーを作りたい」という思いもある。川上会長は、蔵書の半分程度を“自炊”して電子化しており、欲しい本に紙版と電子版があれば必ず電子版を買うほど電子書籍が好き。だが、既存の電子書籍サービスには、操作性やソーシャル性などの点でいくつか不満があるという。
「i文庫」「読書メーター」の買収は、Kindleなどライバルに対抗でき、既存の電子書籍リーダーの不満点を解消した電子書籍リーダーを作るための第一歩だ。川上会長はi文庫を「断トツで使いやすい」と評価し、読書メーターは書籍レビューサイトとして日本一実績があると話す。
同社がWebサービスを買収するのは初。自社開発ではなく買収を選んだのは「リソースの問題」からだ。事業領域が動画から生放送、メールマガジン、ライブイベントなど多方面に拡大する一方で、エンジニアの数がひっ迫し、自社開発だけで戦線を広げることが困難になっているという。
「電子書籍で勝つには、どのライバル企業よりうちの担当者が多いぐらいでないと僕は安心できないが、そこまで余裕のあるリソースを用意できなかったので、外部にあるもので補強して、ブーストをかけようとした」
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