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「VOCALOID4」が得た表現力、使いやすさとは──発表会を振り返る(1/5 ページ)

» 2014年11月21日 22時00分 公開
[松尾公也,ITmedia]

 「VOCALOID新製品」と中身は秘して集められた11月20日の記者会見で、VOCALOIDの父・ヤマハの剣持秀紀さんが披露したのは「VOCALOID4」だった。「さらに表現力が高まります」「さらに使いやすくなります」と剣持さんが話したとおり、前バージョンのVOCALOID3から大きく変わったのは、その表現力の豊かさと、VOCALOIDを使って楽曲を作る、いわゆるボカロPが使った場合の操作性だ。11月20日に行われた発表会を振り返りながら、詳しく見ていこう。

photo 発表会に出席した声優の浅川悠さん、ヤマハの剣持秀紀さん、クリプトンの佐々木渉さん、AHSの尾形友秀社長

ささやきからシャウトまで、なめらかにトーンを変化

 表現力でのポイントは2つある。

 まずはクロスシンセシス。スタンドアロンの編集ソフトである「VOCALOID4 Editor」、または音楽制作ソフトであるCubase 専用の編集ソフトである「VOCALOID4 Editor for Cubase」(通称ボカキュー)に、同じシンガーで複数の声色を持つVOCALOID4やVOCALOID3のデータベースを読み込んで、プライマリとセカンダリの指定をすると、その2つの声色のどちら側に寄せるか値を指定してカーブ・直線を描くことで音色を思い通りに変化させることができる。

 VOCALOID3では、声色を使い分けるためには複数のトラックを用意して、それをあとでミックスする必要があったが、VOCALOID4では、その変化も1つのパラメータのように扱える。例えば標準的な声質に徐々にソフトっぽさ、パワー表現を加えていくことができるのだ。

 もう1つはグロウル。ロックやメタル、ブルース、ジャズなどで程度は違うが使われる表現方法で、うなるような、歪んだ声。これがVOCALOID4に新たなパラメータとして加わった。ヤマハの開発者が中心となった論文「スペクトルモーフィングによるグロウル系統の歌唱音声合成」が情報処理学会で発表されており、ある程度予想されていたことでもあったが、実際にサンプルを聞くと、人間が歌っているかのような表現力で、驚くはずだ。

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 このグロウルを使えるのは、VOCALOID4用に開発されたデータベースのみ。クロスシンセシスとは異なり、VOCALOID3のデータベースを読み込んだだけでは使うことができない。

 グロウル用の収録を新たに行うことも可能だが、それができない状況でも、VOCALOID4データベースであれば使うことができる。ほかの歌手が使ったグロウル用データを適用することで利用できるのだ。このため、発売から5年がたち、小学生の声ではなくなっているはずのボカロ小学生「歌愛ユキ」も、「デスボイス小学生」になれる。

 この2つの新たな表現を使えば、中心的な声質からささやくような声、パワフルなロックボイスまでを自由に行き来できるため、歌唱力のあるシンガーに肉薄することも可能だ。ハードロック、メタルなどだけではなく、こぶしを効かせた演歌も歌え、さらに情感が増すという。ヤマハでは既に「天城越え」などで試して、よい結果を得ているという。

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