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「次がラストチャンス」 金星探査機「あかつき」軌道投入に再挑戦 「必ず成功できる」(2/2 ページ)

» 2015年02月06日 18時30分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 あかつきはこの5年間、7回にわたって近日点を通過しており、機器の温度はそのたびに上昇してきた。12月の軌道投入まであと2回(今年2月11日と8月29日)近日点を通過する予定。「設計条件は超えているが、ハードウェアの設計マージンなどを含めれば、まだ大丈夫、何とか持ちこたえてくれるのではと期待している」(石井信明プロジェクトエンジニア)。


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 軌道投入は今回がラストチャンスになるという。「2010年に失敗した時は、エンジンが緊急ストップしたため燃料が残っていた。全部噴いてしまっていたら今年の再投入はなかった。今回ダメだったとしても、燃料がなくなってしまうので次のチャンスはない」(同)。再投入には、姿勢制御エンジン8基のうち4基を使う予定。「4基とも正常に噴かないと、予定している軌道には入れない」(同)ため、精密な運用が求められる。

観測機器の状態は 「悲観する材料ない」

画像 今村剛プロジェクトサイエンティスト

 カメラなど観測機器を最後にチェックしたのは4年前。機器の状態をチェックするにはハイゲイン(高利得)アンテナを地球に向ける必要があるが、あかつきの姿勢を変えると、これまでとは別の面が太陽に面してしまい、温度が上がってしまう危険性があるため、確認は避けているという。

 ただ観測機器は「衛星の中でも比較的涼しくて快適な場所に設置されており、放射線による劣化も想定内」(JAXAの今村剛プロジェクトサイエンティスト)のため「悲観する材料はあまりない」という。

 軌道投入に成功すれば、3カ月ほどかけて機器のチェックを行い、16年4月ごろから本格的な観測をスタートする。軌道が変わったため、当初に予定していた観測の一部ができなくなるが、新たに可能になる観測もあるという。


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 当初の予定よりも周期が長く、遠金点(金星から最も遠い点)も離れてしまうため、金星から遠い位置では画像の解像度が荒くなってしまう。また当初の軌道は、金星の大気の速度とあかつきの角速度が同じになるよう設計ししており、大気の動きを同期した観測ができる予定だったが、それもできなくなる。一方で、軌道周期が長いため、1週間など長期間連続した撮像が可能になるほか、大規模現象を把握しやすくなるなどメリットもあるとしている。

 「観測データを解釈して研究する上で、より頭を使う必要が出てきた。高い解像度で撮影できるのは限られたところだけになるが、より長い期間にわたって連続したデータが取れる場所もある。お互いをうまく組み合わせ、どういう解釈が正しいかを確かめながらやることで、かなりの部分、やろうとしていたことは補えるのでは」(今井プロジェクトサイエンティスト)

 軌道投入に成功すれば、残りの燃料で2〜4年ほどの観測が可能。観測が終わり、燃料がなくなると、金星の重力に引かれて金星に落ちる見通しだ。


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 「本来なら5年前に行って成功していて当然のミッションだった。幸いにして5年後にチャンスが与えられたので、“お祭り騒ぎ”ではなく、粛々と責任を果たしていきたい。投入日はたまたま、5年後の同じ日だが、感傷的になることなく冷静に進めたい。当初の計画から5年遅れてしまったが、何とか成功させたい」と中村プロジェクトマネージャは気を引き締めている。

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