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「Googleに負けているとは思わない」――DeNAが“自動運転タクシー”参入、その背景と勝算(1/2 ページ)

» 2015年05月28日 18時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

 「2020年に東京で、無人のロボットタクシーを走らせたい」――ディー・エヌ・エー(DeNA)執行役員の中島宏氏は、こんな夢を語る。

画像 DeNAの中島氏(左)とZMPの谷口社長

 同社は、ロボットベンチャーのZMPと合弁で新会社「ロボットタクシー」を5月29日に設立。DeNAのネットサービスノウハウと、ZMPの自動運転技術を連携させ、タクシーやバスなど自動運転による旅客運送事業の実現に向けた研究開発を行い、事業の世界展開を図る。

 自動運転カーの開発にはGoogleなど世界のIT企業や大手自動車メーカーが参入し、グローバル競争が激しくなりつつある。現在、各社は自動運転の技術面でしのぎを削っているが、技術が確立した後は、乗った人の“体験の質”が差別化ポイントになるとDeNAは展望。ネットサービス開発で培ってきたユーザー体験の質を上げるためのノウハウで、Googleにも十分に対抗できるとみる。

2020年までに無人のロボットタクシーを

 ロボットタクシーは、「世界初、運転手がいない“ドライバーレスタクシー”専門会社」だとZMPの谷口恒社長は紹介する。タクシー事業としてのソリューションやアプリケーション開発にDeNAの知見を生かし、自動運転の技術などはZMPが提供。資本金は7億円で、DeNAが66.6%、ZMPが33.4%を出資し、DeNAの中島氏が社長、ZMPの谷口社長が会長に就任する。

画像 サービス展開のタイムスケジュール

 まず、各地の実験区域で有人/無人の自動運転技術を実験し、技術を確立。法令や規制が整えば、限定的な地域でデモサービスの実証実験を行う。その後、正式サービス化し、国内外にサービスエリアを拡大していく――という流れで事業化を進めていく。

 ドライバーを乗せた状態での自動運転実験は、ZMPがすでに愛知県の公道で実施。実用化のめども見えているという。ただ、ドライバーを乗せず、完全に無人の状態での公道実験やサービス化は、ジュネーブ条約や道路交通法など関連法の改正が必要で、開始できる時期のめども見えていない。

 「夢としては、2020年に東京で無人ロボットタクシーを多数走らせたい。技術的には十分可能で、法令の整備が課題だが、まったく不可能なこととは思っていない」と中島氏は話し、実現のために関係各所に働きかけていくという。谷口氏によると、ドライバーを乗せた状態での無人運転実験の規制は「日本が一番緩い」レベルといい、2020年までに無人運転が実現する可能性も低くないとみている。

 自動運転タクシーが事故を起こした場合の責任の所在については、「法律でも何も決まっていないので言い切れないが、責任は、タクシーか事故の相手方のどちらか、というシンプルな整理で可能になるだろう」(中島氏)とみている。

画像 ビジネスモデルの可能性

 新会社のビジネスモデルは「まだ決めていない」という。移動手段として自動運転タクシーを提供するだけでなく、決済や車内のエンターテインメント、整備など周辺サービスの可能性がさまざまにあるとみており、1社ですべて提供する選択肢もあれば、他社との協業やフランチャイズで展開する可能性もある。「国や地域で状況が異なるので柔軟にやる。ビジネスモデルを固定するつもりはない」。

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