モバイルゲームやネットサービスを提供してきたDeNAがなぜ今、自動車産業に参入するのか。理由の1つはその市場規模の大きさという。「自動車産業は、完成車だけで11兆円、タクシーだけで1兆7000億円、関連産業を含めるとトータル50兆円以上の巨大市場。ネット業界よりも2ケタ大きい規模で、非常に魅力的だ」。
「自動車産業は、“遅れてきたIT革命”にさらされている」ことも背景にある。Googleが自動運転カーを開発し、モバイル配車サービスの米Uberが注目を集めるなど、世界的に激変期を迎えつつある自動車産業。携帯電話の歴史になぞらえてこう話す。
「携帯電話は、ネットにつながってiモードができ、その後、スマートフォンが普及し、ハードからソフトに付加価値の源泉が移行している。自動車産業は今、iモード前夜ぐらいだ。今後15年、20年で、ハードからソフトに付加価値が移行するのではないか」。
自動運転カーは今、ハードウェアを制御する自動運転の技術そのものに焦点が当たっているが、技術は徐々に確立されてきている。技術が確立し、焦点がソフトウェアやアプリに移行したとき、ソフト技術を得意とするDeNAに大きなチャンスが訪れるとみる。
その時、勝負を分けるポイントは「ユーザーにどういう体験を提供できるか」だ。「ネットが絡んだサービスやユーザー体験のデザイン、デバイスとの連携、エンタメ要素などの付加価値など、ユーザーに体験を提供する領域で、DeNAはGoogleに負けているとは思っていない。国際競争力あるサービスを作る」。
自動運転タクシーの実現で、過疎地域の住民やハンディキャプを持つ人など「交通弱者」と呼ばれる人たちの移動を楽にし、さらに、移動時間そのものを楽しくしたいという。「エンタメ、観光、物流、ヘルスケアなど、さまざまな領域と密接に絡みあいながらサービスを展開したい」。
1960年代のモータリゼーションで物流や不動産などが激変したように、自動運転カーの実用化により「社会システムごと世の中が変わるのではないか」と中島氏は展望。巨大産業にもたらされる大きな変革の中で、大きなビジネスチャンスをつかむ考えだ。
ZMPは以前から、無人の自動運転カーで旅客運送する「ロボットタクシー」事業を構想しており、一緒に事業をやりたいという複数の会社から打診を受けていたという。中で最も熱心だったのがDeNAの中島氏だったため、DeNAと組むことに決めたと谷口氏は話す。
新会社とは別にDeNAは、オートモーティブ事業の一環として同日、VICSに対応した無料のカーナビアプリ「ナビロー」も公開した。アプリ利用中のデータ通信量を抑える独自の特許技術などで既存の無料カーナビアプリと差別化し、ユーザー拡大を図る。
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