ITmedia NEWS > ネットの話題 >

オンライン学習こそ重要なのは“リアル” いつでもどこでもスマホで学べる世界の先に――「gacco」「schoo」それぞれの戦略(4/5 ページ)

» 2015年08月06日 13時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]

学んだ先の人生を提案する

photo NTTドコモ 伊能美和子教育事業推進担当部長

森:海外のMOOCで言うと、どこのサービスを意識しているというのはありますか?

伊能:NTTグループとしてはITビジネス人材の育成という意味で「UDACITY」を意識すべきかもしれませんが、個人的には「Coursera」です。

 スタンフォード大やMIT(マサチューセッツ工科大)のように、MOOCで成績上位を取ると学位として認められるような環境を目指したいと思っています。当然今すぐというわけにはいかないですが、AO入試への活用など、できる形から少しずつ公教育とつなげていきたいです。

森:ああ、そうですよね、分かります。僕は流派が近くなってきたと感じているのは「UDACITY」なんです。ビジネスで活躍することを出口に、実務力の担保を目標にし、企業がリクルートしたい人材を生み出す。提供するものは学位より資格に近いイメージです。

――伊能さんの「個人的には」という部分は具体的にはどういう意味なのでしょうか。

伊能:端的に言うと、大学教育の中でリベラルアーツが軽視されていることへの危惧です。これからさらにグローバル化が進む中で、相手の背景を知り、自分の国やアイデンティティについて話すべき内容を知っておくのは、言語の壁の以前の問題として大事なことだと思うんです。

 MBAに関する研修をずいぶん前に受講した私が、管理職として最近受けた研修は宗教学や哲学に関するもので、興味深く聞きました。この年齢になって「知っておけばよかった」と思うことはまだまだあります。若いみなさんにも触れてほしいというのはもちろん、ある程度年を重ねたからこそ学び直したいと考える人が学びやすい環境を用意したいです。

森:なるほど、そのあたりは考え方の違いですね。

photo スクー 森健志郎社長

 スクーの根幹にある目指すものは「人の人生を劇的に変える」であって、僕個人としては根本的に教育事業がやりたいわけではないんです。学ぶプロセスよりも、学びの先にどんな働き方ができるのか、どんな人生を送れるかに興味があります。データを蓄積すれば、DNA配列で個人の資質が分かるようになるかもしれない。人間についてもっと理解を深めたい、あくまでその最初の一歩という意識です。

――DNA配列! そんな言葉が出てくるとは思いませんでした。

伊能:gaccoはあくまで「学びのショーケース」、プラットフォームという意識が強いかもしれません。今は大学や官公庁と連携してコンテンツを作っていますが、自分たちの持っている知を広げたいというニーズは私たちがリーチできていない他の場所にもあると思うんですよね。

 大企業が持つノウハウや技術を後進に伝える、全国のスーパーティーチャーの授業を共有することで学校教育の底上げを図る、日本の伝統芸能や工芸の担い手を育てる――協議の意味での教育に限らずもっと広く活用法を提案していきたいです。

 そのためにも、整備したいのは外国語字幕ですね。現在もアジアやヨーロッパから視聴してくださる人もいますが、海外にも届けることは今後さらに意識していくと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.