アートディレクターの佐野研二郎さんがデザインした2020年東京オリンピックのエンブレムを、佐野さんからの申し出で大会組織委員会が取り下げたことについて、佐野さんが9月1日、コメントを発表した。
エンブレムのデザインについて「模倣や盗作は断じてない」と改めて断言した上で、デザイン以外で「不手際があった」と謝罪。佐野さんのもとには昼夜を問わず取材が殺到し、誹謗中傷メールが届いたり無関係な親族の写真がネットにさらされるなど「これ以上は人間として耐えられない限界状況」だと告白。家族やスタッフを守るためにも「取り下げを決断した」と説明している。
エンブレムをめぐっては、ベルギーの「リエージュ劇場」のロゴと酷似しているとし、劇場とデザイナーが使用差し止めを求めて国際オリンピック委員会(IOC)を提訴。エンブレムの原案デザインについても、2013年に開かれた展覧会「ヤン・チヒョルト展」のポスターと似ているという指摘があがっていた。また、エンブレムの使用例を示した「展開例」の画像の一部が、ネット上で第三者が公開している写真を無断で使用していたことが判明していた。
佐野さんは、「疑いをかけられているような模倣や盗作は、原案に関しても、最終案に関しても、あってはならないし、絶対に許されないことと今でも思っている。模倣や盗作は断じてないことを、誓って申し上げます」と断言し、デザインの盗用を強く否定。その上で、「エンブレムのデザイン以外の私の仕事において不手際があった」と認め、「一切の責任は自分にある」と、改めて謝罪している。
一方で、「一部のメディアで悪しきイメージが増幅され、私の他の作品についても、あたかも全てが模倣だと報じられて話題となり、さらには作ったこともないデザインにまで、佐野研二郎の盗作作品となって世に紹介されてしまう程の騒動に発展してしまった」との認識を示す。
自宅や実家、事務所にメディアの取材が昼夜休日を問わず来ており、事実関係の確認がないまま断片的に報道されることも「しばしばあった」という。
さらに、佐野さんのメールアドレスがネット上で話題になり、「さまざまなオンラインアカウントに無断で登録され、毎日、誹謗中傷のメールが送られ、記憶にないショッピングサイトやSNSから入会確認のメールが届いている」と告白。佐野さん本人だけでなく、家族や無関係の親族の写真までネットにさらされるなど「異常な状況が今も続いている」という。
佐野さんは「東京オリンピック・パラリンピック大会の成功を願う純粋な思いから」エンブレムデザインのコンペに参加したが、結果的に「全く別の方向に向かってしまった」とし、「もうこれ以上は人間として耐えられない限界状況だと思うに至った」と告白。「私自身や作品の疑義に対して繰り返される批判やバッシングから家族やスタッフを守るためにも、もうこれ以上今の状況を続けることをは難しいと判断し、今回の取り下げを私自身も決断した」と説明している。
今後は信頼回復に向け、「日々の仕事に専念するしかない」とし、関係者に改めて謝罪している。
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