「あかつきは金星の重力圏にとらえられ、金星の衛星になりました」――宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「あかつき」が、金星周回軌道の投入に成功した。中村正人プロジェクトマネージャは12月9日の記者会見でこう宣言した。投入から約5時間後にあかつきが撮影した金星の雲の画像を見て、「なんじゃこりゃ」と驚いたという。
あかつきは、金星の大気の運動や雲の形成過程などの観測を目的とした惑星気象衛星で、2010年5月に打ち上げられた。同年12月7日、金星周回軌道に投入する予定だったが、メインエンジンが故障して失敗。丸5年経った今月7日、姿勢制御エンジンを使った再投入という世界初の挑戦を行い、成功した。
軌道の計測と計算の結果、あかつきは金星を約13日14時間で周回する軌道を周回していることが分かった。金星から最も近いところ(近金点)で高度約400キロ、最も遠い所(遠金点)で高度約44万キロという楕円軌道で、金星の自転と同じ方向に周回している。探査機の状態も正常であることを確認したという。
今後、約3カ月間の初期観測を行いながら、9日間程度で周回する楕円軌道に移行する予定。来年4月から定常観測を始める計画だ。
中村氏は、2010年の打ち上げ前に作られたという、あかつきを描いたポスターを紹介。管制室に張られていたそのポスターに描かれたあかつきの姿勢と金星との位置関係は、今回の再投入とまさに同じだった。「まさにこの状態で投入を行った。大変感慨深いものがあった。5年間経ってしまったが、ついにわれわれの夢が実現した。ありがとうございました」。
初期観測はすでに始まっている。投入から約5時間後、あかつきに搭載した3台のカメラで金星を撮影した。機器の劣化も心配されていたが、カメラ搭載部を太陽熱にさらさないよう運用してきた努力が実り、3台とも「極めて良好」な状態と、今村剛プロジェクトサイエンティストは話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR