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「アルマゲドン」的地球の危機、小惑星より怖いのは?

» 2016年01月04日 15時24分 公開
[大村奈都ITmedia]

 英バッキンガム大学の天文学者グループが、王立天文協会の「Astronomy & Geophysics(天文学と地球物理学)」誌12月号に発表した論文で、巨大彗星が地球に衝突して生命に危機をもたらす可能性は、小惑星が衝突するより高い、と警告した。

photo Astronomy & Geophysics誌掲載の論文

 過去20年にわたる観測により、直径50キロメートル以上の巨大彗星が、木星から海王星の間の外部太陽系に存在していることがわかった。これらの惑星の重力によって軌道が変わった巨大彗星が、火星より近い内部太陽系に入り込み地球の軌道と交差する可能性を、天文学者グループは4万年から10万年に1回と計算している。これは、火星と木星の間にある小惑星が地球軌道に入り込んでくる確率より高いという。

photo 図:Duncan Steel教授が描いた、太陽系を巡る天体の中で、赤い楕円軌道はケンタウルス族に属する巨大彗星を示す

 そして巨大彗星は小惑星と違い、地球に直接衝突しなくても、砕け散って細かいチリや小さな破片になることで、回避不可能な危険域を作り出す。

 地質学的および古生物学的証拠から、紀元前1万800年から紀元前2300年まで、日本では縄文時代に当たる時期は、気候が大きく変動したことがわかっている。この事実は、巨大彗星に関する仮説を裏付けるだろう。

 また、アポロ計画による月面探査で、月の岩に残された1ミリメートル未満の微小クレーターが過去3万年以内のものだと示されたことも、巨大彗星が残したチリの痕跡と解釈できるとしている。さらに遠い過去、恐竜などが絶滅した6500万年前の異変、いわゆる大絶滅にも当てはまるかもしれないと、この論文は警告している。

 論文の主著者であるビル・ネイピア教授は、「我々は過去30年間、小惑星と地球との衝突に注意を向けてきたが、今回の論文は、新たに木星以遠にも目を向ける必要が出てきたことを示している。我々が正しいならば、巨大彗星をもっと理解する必要がある」と述べている。

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