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“ブラックホールが合体した音”も聴ける 動画と画像で知る「重力波」

» 2016年02月12日 11時52分 公開
[ITmedia]

 アインシュタインの予言を成就させた、重力波の初検出。もとになったのは、13億光年先で起きた連星ブラックホールの合体というイベントだ。そのエネルギーは「観測可能な全ての星の50倍」というとてつもないもので、これが瞬間的に放出されたという。観測に成功した米国のLIGOは、豊富な画像や動画でこの大発見を説明している。

photo 連星ブラックホールのイメージ LIGO

 重力波は、巨大な質量の天体同士が運動しながら合体する際に発生すると考えられ、時空のゆがみが光速で波のように伝播する。アインシュタインが一般相対論の発表後に予言し、その発見を世界の科学者が争っていた。

photo 一般相対論によると、巨大な質量は時空をゆがませる。重力波はこのゆがみが波となって光速で伝播するというものだ。画像は太陽によってゆがんだ時空のイメージ LIGO/T. Pyle

 検出に成功した観測装置「LIGO」は、1辺約4キロというL字形の施設だ。それぞれの辺でレーザーを発射し、鏡で反射されて戻ってくる時間を正確に計測している。重力波によって空間がゆがめばこの時間にずれが生じるので分かる──という仕組みだ。「最も正確な物差し」と表現している。

 LIGOによって人類が初めて重力波を見出す時がきた。2015年9月14日の日本時間午後6時51分のことだ。太陽の29倍と36倍の質量というブラックホールが13億年前に合体したイベントをとらえたもので、その際に太陽の3倍の質量が重力波に変換されたと考えられている。

photo 検出した重力波の波形 LIGO

 LIGOが制作した動画では、ほんの1秒に起きたブラックホールの合体とそれによって生じた時空のさざ波が広がる様子がシミュレーションされている。

photo 動画より。時空のさざ波が広がる

 面白いのは、2つのブラックホールが衝突した“音”だ。検出した重力波を可聴帯域の周波数に変換したものだという。

 重力波の初検出はLIGOに譲ったが、日本の「KAGRA」も稼働すれば新分野「重力波天文学」に大きく貢献していくだろう。ニュートリノの質量発見でノーベル賞を受賞した梶田隆章さんは、KAGRA計画の代表として「LIGO-Virgoが重力波信号を発見したことを心より祝福します。これは重力波および一般相対性理論の研究者が待ち望んでいた歴史的快挙です」とたたえた上で、「KAGRAでは、連星中性子星合体によるブラックホールの誕生を検出したいと考えています」と意気込んでいる。

photo 世界の重力波観測施設 LIGO

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