そしてついに、「いろは文様」「反射エンボス」の2種、現物の壁紙がなかったため、カタログを元に描き起こしたパターンが2種の計4デザイン、それぞれ8つのカラーバリエーションを持つ全32種類の「復刻壁紙」が完成しました。
インテリアの展示会では、新商品の発表や実際に販売中の製品の展示が中心です。売ってないものを展示しているのはおかしい! HPとサンゲツはどんな関係があるんだ! と来場者にお叱りを受けることもありました。両社の間にプリンタ部門でのお取り引きはありません。面白いことをしよう! という気持ちで実現した展示会限定コラボです。
でも、いいんじゃないでしょうか。モーターショーだって公道を走れない未来のクルマを展示していますよね。このコラボ壁紙の見本帳は、4冊だけ手作りで作成しました。和とじ製本で作られたこのカタログは、海外の展示会でも好評でした。
せっかくリメイクした図案、壁紙だけにしておくのはもったいない! ということで壁紙ではなく合成皮革にも印刷し、クッションやバッグも作ってみました。
――こうして、専門家でもない素人の私でも壁紙企画の体験ができました。プロのデザイナーや、工芸家、職人さんによって日本のさまざまな「資産」をモチーフとしたデザインが世界に発信されたら、と可能性を感じました。
このような特別なプロジェクトだけではなく、例えば大阪の壁紙メーカーでも40年ほど前に日本で販売されていた壁紙の復刻や、装丁デザインの壁紙が作られています。デザインと発想は止まりません。どんどん湧き上がるアイデアを最短でカタチにできる技術が、デジタル印刷です。
シンガポールの展示会で披露されていた、花柄のような水彩画テイストの日本製の壁紙は、ガラスビーズを散りばめた特殊なもの。淡い色合いなのにきらきらと鮮やかに光っています。こちらもデジタル印刷と特殊技法が融合した、じっくりと眺めてしまう素敵な壁紙です。
日本には長い歴史と地域に根付いた、そして伝統文化や伝統工芸がたくさんあります。そんなテーマやモチーフが染みこんだ、デザイナーと職人さんのコラボレーションで生まれた壁紙が世界に発信されたら……想像は広がります。
著者:霄洋明(おおぞら・ひろあき)
日本HP大型プリンターエバンジェリスト。ワイドフォーマット事業本部に所属し、大型のインクジェットプリンターのソリューションアーキテクトを担当。
東京都中野区出身。学生時代は総合格闘技と彫刻(木彫・塑造)に熱中。大型インクジェットプリンタ黎明期ともいえる1996年頃にアルバイト入社した画材店で大型プリンタと出会う。
その後、広告代理店で、屋外/交通広告・商業施設装飾・サイン計画などに関わり、企画ディレクション・制作施工管理を経験。2010年より 日本HPに入社。デジタル印刷を活用したサイン・ディスプレイとインテリアデコレーションの企画・制作・施工の知見を生かし、HP Latex・UVプリンタ(業務用大型プリンタ)の市場・用途開発を担当。現在は、デジタル印刷技術によってサイン・ディスプレイ業界、インテリア業界、印刷業界をつなげるハブとなってお客様の事業領域拡大を支援することがテーマ。
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