正直、予想以上の盛り上がりでした。皆さんが一瞬でこの世界に入ってきてくださった。楽しんでいただいていることが舞台に立つ前から分かったので「受け入れられたんだ」と安心しましたね。
出番を待つ袖から、会場の左右にあるニコニコ生放送のビジョンが見えるんです。たくさんのコメントであっというまに画面が埋め尽くされるのを見て、すごいぞ! と興奮していました。画面の向こうからも熱気を感じました。
――「萬屋!」(獅童さんの屋号)、「紀伊国屋!」(國矢さんの屋号)、そして「初音屋!」(初音ミクさんに今回付けられた屋号)と、演者に投げかけられる「大向う」もすごかったですね。
本当に! 回を重ねるたびに声援が大きくなっていくのが明らかに分かりました。1時間でこんなに「紀伊国屋!」の声が聞けるなんて……江戸時代から続く紀伊国屋史上、最大の大向うの数だったんじゃないでしょうか。冒頭でそれぞれの屋号をご案内していたのもありますが、客席もたった2日間でどんどん学んでくださって、一緒に舞台を育てていただいている感覚でした。
歌舞伎座をはじめ通常の歌舞伎公演でかかる大向うは、ここでほしい! というタイミングでいただく、演技やせりふの一部に近いものです。舞台を盛り上げることも壊すこともできますし、スキルも問われます。
「超歌舞伎」の大向うは普段のそれとはまったく別物でした。ライブやコンサート、フェスのような……思い思いに声を上げてくださっていてうれしかったです。普通はごひいきや応援している人にかけるものですが、今回はストーリーの盛り上がりに対してかかるのも新鮮でした。ミクさん頑張れ! 負けるな! という気持ちのこもった声援ですよね。客席が舞台と一体となっている、感情移入してくれているのがよく分かりました。
青龍にもたくさんのお声をいただいて、敵役なのにこんなにもらっちゃっていいの? と。「こんなに応援されたら、忠信倒しちゃうかもよ!?」と思いながら演じていました。それくらい僕らのパワーになりましたね。お客様に引っ張ってもらったことで自信を持って演じられた部分がかなり大きかったです。
――ニコニコ生放送でも、コメントでたくさんの大向うがかけられていました。
コメントの力は会場にいてもすごく大きかったです、肌で感じました。多分、単に「声出してくださいね」と言ってもここまで盛り上がらなかったと思います。公演中に声出すなんてそりゃあ緊張しますよね。会場のビジョンにぶわーっと「萬屋!」「初音屋!」「紀伊国屋!」が並ぶことで会場のボルテージも上がっていった、こっちも声出すぞ! と盛り上がっていったんだと思います。
――客席の反応で演技や演出面で変わっていった箇所はあるのでしょうか。
稽古の時は一人芝居のようでやりにくかった、と言いましたが、舞台の上ではミクさんと本当に対面しているような思いを抱きました。自分でもびっくりするくらい自然な会話ができて、きちんとミクさん“と”そこに立っていたんですよね。回を重ねるたびに僕らがミクさんにうまくバトンを渡せるようになっていった。これは普段の公演とは違った感覚でした。
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