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» 2016年07月29日 07時00分 公開

費用は数十億円規模 創業8年のスタートアップが「人工衛星50基」を飛ばすわけ(2/3 ページ)

[片渕陽平,ITmedia]

“広大な範囲の衛星写真”にニーズを発見

 ウェザーニューズは、海運業者が最適な航路を見つけるために、天候や海流の情報を伝える事業を手掛けている。その中には北極海を通る業者もあり「海氷の分布状況を毎日知りたい」というニーズがあった。

 広大な北極海を見渡すには衛星写真が適しているが、衛星写真は1平方キロ当たり数万円と高価で、航路の画像を全てそろえようとすると莫大な費用がかかる。そこでウェザーニューズは、自社で衛星を持って好きなだけ写真を撮る――という方法に注目。アクセルスペースに依頼し、民間として初の商用小型衛星を打ち上げた。

 「これをモデルケースにすれば、“第2、第3のウェザーニューズ”が出てくる……そう思った」と中村CEOは振り返る。しかし、現実はそう甘くはなかったという。他の企業に売り込んでも、返ってくる答えは「あれは、ウェザーニューズさんだからね」というものばかり。「気象情報の会社なら人工衛星を買うかもしれないが、うちの会社ではいらないと言われてしまった」(中村CEO)。

 超小型衛星のメリットには、大型衛星と比べた時の“安さ”があるが、宇宙関連事業を手掛けていない企業からすると、数億円が安いかどうかの判断はニーズによる。打ち上げも100%成功するとは限らず、リスクを不安視する企業も少なくなかった。

 そこでアクセルスペースは昨年、大きな方向転換を決意。企業向けに人工衛星を受託開発するビジネスに加え、アクセルスペースが自社で人工衛星の開発から打ち上げ、運用までを行い、衛星が撮影したデータを企業向けに販売する新構想「AxelGlobe」を打ち出した。まず2017年に3機を打ち上げ、22年ごろには50基が地球を取り巻くよう周回させる予定だ。

photo 打ち上げ予定の衛星「GRUS」(右)と新構想「AxelGlobe」のイメージ(左)

森林の違法伐採、パイプラインの監視――衛星50基が可能にする“新ビジネス”

 超小型衛星50基で地球の画像を撮影すると、どんなビジネスが生まれるのか。最大のポイントは「1日1回、世界中のいたるところを撮影し、画像がたまっていくこと」(中村CEO)という。

 過去と最新の画像をアルゴリズムによって比較すれば、小さな変化を見つけ出せる。例えば、森林地帯を毎日撮影しておけば、違法な伐採があった際に見つけられるし、数千キロにおよぶパイプラインなど巨大なインフラを監視することもできる。その差分データを企業に提供するビジネスが成り立つのでは――という考えだ。

 「世界中で何者かが勝手に森林を伐採したり、原油を盗み出したりするトラブルがたびたび起きているが、数千キロの範囲を24時間、自動車を走らせて見回るわけにはいかない。衛星で常時監視しておけば、不審な場所を発見したときにそこだけ見に行けば済む」(中村CEO)。

 衛星の役割は監視だけではない。ショッピングセンターの出店先を決める時など、エリアマーケティングでの活用も見込む。衛星の画像から交通量を調べれば、現地に人間を送って調査しなくても、最適な立地を見つけ出せる可能性があるという。

photo 2014年に打ち上げた人工衛星「ほどよし1号機」が撮影した画像(アクセルスペースのWebサイトより)

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