なぜ1日でチラシが作れたのか――その答えは、NISCが企業や学校向けにWebサイトで公開している「情報セキュリティハンドブック」(9月16日現在は第1章まで公開)にある。文月さんによると、チラシに掲載した注意事項の一部やイラストは、このハンドブックから抜粋したものだという。
「役所だから、事前に共有している内容でないと、すぐにはゴーサインを出せない。日頃からさまざまな事態を想定してハンドブックにまとめていたからこそ、短期間で対応できた」
さらに、子どもが読んで分かりやすいように表現を書き換えたり、イラストを一部加工したりと工夫を凝らした。「利用者へのお願い」というタイトルにすると「読まれずにすぐ捨てられてしまう」と考え、ポケモントレーナーなど興味を引くフレーズを取り入れた。「コンテンツに対してコメントするときの礼儀だと思い、用語などはしっかりと調べた」(文月さん)。
NISCの“役所っぽくない”取り組みは、Pokemon GOのチラシだけにとどまらない。今年1月には、サイバー攻撃や個人情報流出への関心を促すために、アニメ「攻殻機動隊 S.A.C.」とコラボレーションしたポスターや、攻殻機動隊の公式サブストーリー漫画などを作成、公開した。
「以前から、NISCの部署内で『攻殻機動隊』と親和性があると漠然と皆が考えていたようで、誰からも反対はなくスムーズに準備が進んだ」と文月さんは振り返る。
注意したポイントは、Pokemon GOと同じく「コンテンツへのリスペクトを忘れないこと」(文月さん)だ。NISCが伝えたいメッセージを込めつつも、アニメの世界観を壊さないように意識し、いかにも作中のキャラクターが言いそうな“決めぜりふ”を取り入れたという。「ファンが見たときに『こんなせりふは言わない……』と残念に思ってほしくなかった」。
コラボの準備を進める間、「漫画やDVDのセットが部署内を飛び交い、ファンじゃない人はいなかった」と文月さんは振り返る。「素子がサイトーをスカウトしたせりふ『いい腕をしているな! いまから私の部下になれ!』を使おう」「タチコマの出番が少ない!」などファンならではの議論が繰り返され、「最終的に壁に貼ってみて、制作メンバーが『これでいい』と納得できるポスターが完成した」という。
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