Amazon.co.jpの読み放題サービス「Kindle Unlimited」がスタートしてから1カ月あまり経った。Kindle Unlimitedを通じ、個人で漫画を販売している鈴木みそさんはこのほど、初月の収益をブログで公開。約141万円稼いだと報告し、「出版社に任せず、自分で出しちゃいましょう」とほかの漫画家に呼び掛けている。
Kindle Unlimitedは、和書12万冊以上・洋書120万冊以上(スタート当時)の電子書籍が月額980円(税込)で読み放題になるサービスで、日本版は8月3日にスタートした。出版社が多数参加しているほか、個人作家でも簡単に参加できる。
個人作家の作品は、読まれたページ数に応じて収益が分配される。書籍のジャンルや端末に関係なくページ数を計算するため、「Kindle Edition Normalized Page」(KENP)と呼ばれるAmazon独自の基準でページ数を算出。8月は1ページ(KENP)当たり約0.5円が分配されたようだ。
漫画家の鈴木みそさんは、漫画「ギリギリ温泉」(1〜4巻)、「アジアを喰う」など12冊をKindle Unlimitedで公開。8月1カ月間で計約279万ページ(KENP)読まれ、約141万円の収益を得たという。
読まれるページ数は9月以降も減っていないという。無料期間の30日間だけ利用し、9月には利用をやめてしまったユーザーも少なくないとみられるが、ユーザーの“読む量”は、無料期間終了後も減っていないようだ。
鈴木さんは2013年、作家がKindleで電子書籍を直販できる「Kindle ダイレクト・パブリッシング」(KDP)で作品を販売し、1年間で1000万円の利益をたたき出して話題になった。ただ当時は、「話題になった最初の月と2カ月目で600万円と6割を稼ぎ出し、後ろがどんどんしぼんでいった」という。スタートから2カ月目もペースを維持しているKindle Unlimitedは「もしかしてじわじわ長いこと読まれ続けるんではないか」と期待を述べている。
Kindle Unlimitedでアダルト漫画7作品を販売している同人サークル「IronSuger」も、ブログで8月の収益を公開。555万ページ(KENP)読まれ、約282万円を売り上げたと報告している。無料キャンペーンでランキング順位を上げ、勢いがあるうちに作品を追加投入する――などの戦略が奏功したという。
9月は16日までの半月で512万ページ読まれおり、この調子が続けば「来月は400万円稼いだと報告することになるかもしれない」としている。
Kindle Unlimited参加前は、1カ月の電子書籍販売部数はわずか16部で、収益は2787円だったという。Kindle Unlimitedに参加した8月は、実売部数も436(収益は約14万円)に伸び、Kindle Unlimitedのロイヤリティと合計で、約296万円稼ぎ出したとしている。
鈴木さんとIronSugerはそれぞれ、漫画作品を公開している。漫画は小説など文字コンテンツと比べると既読ページ数を稼ぎやすく、ページ数に応じて収益が配分されるKindle Unlimitedと相性が良いのかもしれない。
鈴木さんは、「Unlimitedで一番大事なのは、次のページをめくらせる力」と指摘。「実は販売よりもレンタルの方が、作品の真価を問われるのかもしれない」と述べている。また、自身やIronSugerの収益に触れた上で、「漫画家の皆さん。出版社に任せてないで自分で出しちゃいましょう」と、Kindle Unlimited利用をほかの漫画家にも呼びかけている。
IronSugerは「個人的には、エロ同人作品が増えればKindle Unlimitedのユーザーも増えると思っている」とし、「Amazonにはエロ同人作家をもっと受け入れやすくする体制を整えて欲しい!」と訴えている。
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