「新しいデジタル時代の夜明けである」——そう語るのは、米テキサス州オースティンで開催された年次カンファレンス「DELL EMC World 2016」に登壇した米DELLのマイケル・デルCEOだ。同社がストレージ大手の米EMCを約8兆円で買収し、Dell Technologies傘下の独立子会社として「DELL EMC」を設立してから早1カ月、同グループが目指す今後の展望を話した。
基調講演でマイケル・デルCEOが強調したのは、IoT(Internet of Things)時代における変化の重要性だ。既に世界中で80億台以上ものデバイスがインターネットに接続されているが、2030年頃には2000億台以上にも増えるとの見通しだ。世界人口の25倍にも及ぶこの膨大な数字は、もはや“IoT”というワードが陳腐化しているであろう世の中を見据えてのこと。
デルCEOは「自動運転車によって交通事故や交通違反がなくなる」「ナノボットによってがんを克服し、細胞の修復ができる」「ドローン宅配によって“翌日お届け”はもはや遅いといわれる」といった近い将来のイノベーションを例に挙げながら、「さらに予想もつかないようなアイデアが生まれるかもしれない。これが“IoT”なのだ」(デルCEO)と、大きな期待を寄せた。
ARやVR、ディープラーニング、人工知能といった最新技術が、ライフスタイルやビジネスのやり方を新しいものにする——デルCEOはこれを「デジタルの夜明け」と表現し、成長に期待する一方で、これらがますます進化して必要となるだろう処理能力やネットワーク帯域、ストレージに懸念を見せる。
同社による経営層への調査では、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)に備えている企業は80%にも及ぶが、全体の50%弱が先の見通しが立っておらず、業界がどうなるか分からない、そして78%の企業がデジタルスタートアップやベンチャー企業は自分たちの企業にとって脅威だと考えているという。デルCEOはこれを「デジタルによる大災害」「デジタルの恐怖」と表現する。
「将来への準備ができているできていないに関わらず、恐怖はどんどん近づいてきている。そこで顧客と一緒になってデジタルの将来を構築していきたい」
これがDell Technologiesを設立した主な理由であるとデルCEOは説明する。DELL EMCを筆頭に、Pivotal、RSA、SecureWorks、Virtustream、VMwareを傘下に置くことで、ありとあらゆる市場とセグメントでナンバー1を目指すという。同社は既にサーバ、ストレージ、仮想化、セキュリティ、クラウドソフト、クラウドインフラ、ソフトウェア定義型のデータセンター、垂直統合型インフラ、Platform as a Service(PaaS)の分野ではシェアナンバー1を獲得しており、勢いを保ったままさらにデジタルトランスフォーメーションを主導していきたい考えだ。
DELLとEMCの合併が正式に締結されたのはわずか6週間前のこと。DELLとEMCが一緒になったことで存在意義をさらに高めていき、世の中に対して非常に大きなインパクトを与え、大きなプラスの変革を起こすのが同社の狙いと言えるだろう。
「人間のクリエイティビティがさらに増幅され、さらに多くのイノベーションが生まれるだろう。でもそこには世の中で今まで経験したことないよう課題もあるだろう。これは新しいデジタル時代の夜明けである。このような夜明けを迎えて、われわれ自身が変わらなければならない。そしてこの変化をうまく活用していく必要がある」(マイケル・デルCEO)
会期中、「PowerEdge」サーバーを「VxRail」アプライアンスおよび「VxRack System 1000」ハイパーコンバージド インフラストラクチャ(HCI)に統合するなど、新製品やサービスも同時に複数発表している。
(取材協力:デル)
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