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ジョブズのタッチスクリーンPC批判にMSとApple、6年後の回答(2/3 ページ)

» 2016年10月28日 08時42分 公開
[松尾公也ITmedia]

ジョブズが指摘した「腕の重さ問題」

 スティーブ・ジョブズは2010年10月20日の「Back To The Mac」発表会で、「タッチスクリーンは垂直の画面には適さない。タブレットのような水平の画面向け」であり「(ノートPCのタッチスクリーンは)少し使うと疲れてきて、長く使うと腕を上げていられなくなる」と指摘。Appleが長年ノート型Macにマルチタッチ対応トラックパッドを搭載して、タッチスクリーンを搭載しなかったのはそれが理由だと説明した。

 腕はけっこうな重さがある(50キロの人で両腕で6.5キロという)。腕を前方に上げたまま長時間作業することはできない。たまに使うくらいならいいが、そのためだけにタッチスクリーンをPCのディスプレイに仕込むのか。

 Appleはこれまで、マルチタッチ対応トラックパッドで改良を重ねてきて、12インチMacBookからは感圧に対応し、Taptic Engineによる触覚フィードバックで操作性を向上させている。今回の新しいMacBook Proではさらにトラックパッドの領域を従来の2倍にしている。

 しかし、それだけではタッチスクリーンをつけてくれというユーザーからの要求に対する有効な回答にならない。

 そこで投入したのが、OLEDのマルチタッチディスプレイでファンクションキーのあるキーボードの最上段を置き換えるTouch Bar。左端のEscapeキーから右端の電源キーまで、その間にあるファンクションキーごと代替する仕組みだ。

photo Touch Barを使うとディスプレイには全画面表示したままブラウズできる

 MicrosoftはSurface Dialという大きめのダイヤルを画面に押し当てることで、カラーピッカーを出したりブラシの太さを変えたり様々な細かいコントロールを可能にする提案をその前日に行ったばかりだが、Touch Barは同様なことを、キーボードに手を置いたままでできる。ダイヤルの代わりに、コンテキストに応じて表示されるスライダーで行うのだ。Dialのようにわざわざつかんでディスプレイのところまで持ち上げる必要もない。

 Surface DialもTouch Barも、クリエイティブな作業に必要な微妙な操作に応えられるものだ。MicrosoftはSurface DialはSurface Penとの同時使用で真価を発揮すると言っており、Appleは面積が2倍になったトラックパッドとTouch Barをいっしょに使うと最高だと主張している。

 ジョブズが指摘した腕の重さ問題は、Surface Studioも対処している。スティーブ・ジョブズに酷似したプレゼンスタイルを持つ「Microsoftの父」パノス・パナイ副社長は、「我々は一人ひとりがクリエイターなのだ」といって、Surface Studioのディスプレイをドラフターのように少しだけ水平に近いところまで引き倒してみせた。

photo ゼログラビティと称するヒンジ機構により、わずかに押すだけでディスプレイの傾きを変えることができる

 この機構をそのままiMacに取り入れてくれないかなと思っているMacユーザーは多いのではないだろうか。

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