「錯視」の世界を数学で解明しようとしている研究者の作品展示が、日本科学未来館で始まった。公開は11月17日〜2017年5月15日まで。傾斜して見える文字列を自動生成する「文字列傾斜錯視のソフトウェア」など合計18の作品が展示されている。
「文字列傾斜錯視のソフトウェア」は、東京大学教授の新井仁之さんと新井しのぶさんが過去に制作したソフトウェア。実際は平行に配列されている文字列を、錯覚によって傾いて見せるというものだ。例えば、「夏ワナー」から4文字の繰り返しによる錯視を作るよう設定すると、次のような結果を自動的に出す。
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー
ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏
ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー
ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏
ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏
文字が傾いて見える。これを錯視と呼ぶ。
実は、2005年ごろにネットの掲示板などで流行った遊びの1つ。数学者であった新井仁之さんと新井しのぶさんは。これを「文字列傾斜錯視」と名付け、研究をはじめたという。
研究によれば、文字が傾いて見えるのは脳が錯覚を起こしているため。脳の神経細胞が行っている情報処理を数学を用いてコンピューターで再現し、反応する要因を取り除いたものをコンピューターから出力すると、錯視が消えるという。
この原理を使って、逆に錯視を生み出せるようにしたのがこの「文字列傾斜錯視のソフトウェア」。脳の神経細胞に操作するよう出力することで、傾斜して見える文字列を自動生成可能となる。
新井仁之さんと新井しのぶさんは他にも、錯視を使った技術を多数特許出願。その中には錯視を用いた画像処理技術もあり、すぐにでも画像編集ソフトに導入できそうな技術が見られた。
「錯視は視覚の欠陥と言われることもあるが、むしろものをよく見えるようにするための代償なのではないか」――新井仁之さんは話す。
(太田智美)
日本科学未来館、寝袋でお泊まりする特別イベント実施 地球ディスプレイ「ジオ・コスモス」の下で就寝
“生命らしい動き”を持つ機械人間「オルタ」、石黒教授らが発表 実物を見てきた
ビョークの音楽&VR作品の企画展「Bjork Digital」 本人によるDJ公演も
「体験型展示はもう古い」――日本科学未来館、開館以来初の大幅リニューアルがすごかった
「スペースインベーダー」から「PS VR」まで ゲームの歴史を知る体験型展覧会「GAME ON」、3月開催
異色のロボット「テレノイド」が「人類の新しい友人」に 高齢者との対話サービス事業化へ
耐える系ゆるキャラ「クマムシさん」、クレーンゲーム景品で登場
ホンダの電動1輪車「UNI-CUB」が「β」に 乗りやすく小型・軽量化
VOCALOIDをチップに ヤマハ、“歌える”音源LSI「NSX-1」 制御用ライブラリも公開
世界中の雲の動きをリアルタイムに デジタル地球儀「触れる地球」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR