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「関西の駅はICOCAチャージ額が足りなくても入場できる」は本当だった 理由は“人情”ではなく……

» 2017年01月30日 19時15分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 「JR西日本は、ICカードに初乗り運賃がチャージされていなくても改札を通って駅に入れる」──関東圏に住む人には、にわかには信じがたいツイートが話題になっている。「Suica」「PASMO」といった関東圏の交通系ICカードは、初乗り運賃(乗車する駅から最低限必要な運賃)がチャージされていないと駅に入場できないからだ。ところが、JR西日本の交通系ICカード「ICOCA」は、1円以上のチャージ額があれば駅に入場できるという。

 「SuicaやPASMOにチャージされておらず、改札が通れなかった」──関東圏の駅ではよく見かける光景だが、他地域ではどうやら状況が違うらしい。ICOCAの他にも、全国の交通系ICカードでは「チャージ額が10円以上なら入場可」「0円でも入場可」などと、各社によって入場時のルールが異なることが分かった。なぜこのような違いがあるのか。

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各社で異なる入場時に必要なチャージ額

 話題のきっかけとなったICOCAを発行しているJR西日本のWebサイトを見ると、「ICOCAに1円以上の金額がチャージされていれば駅に入場が可能」と記載されている。つまり、降車駅の改札内でチャージや乗り越し精算すれば、問題無く改札を出ることができる。

photo JR西日本「鉄道でのご利用」より

 一方、JR東日本のWebサイトを確認すると、Suicaは乗車時にチャージ残額が初乗り運賃に満たない場合は駅に入場できないという。

photo JR東日本「自動改札機の通り方」より

 事業者によって異なるチャージ残額による入場のルール。主な交通系ICカードを発行している各社のルールを見ても、入場時に必要なチャージ残額は「0円以上」「1円以上」「10円以上」とばらばらだ。

photo 事業者別のチャージ残額による入場ルール

 ちなみにこの入場ルールはICカードの種類ではなく、事業者の管轄地域にひもづいている。つまり、JR西日本の管轄内であれば、関東のSuicaやPASMOを使った場合でもICOCAと同じく1円以上のチャージ額があれば駅に入場できる。一方、関東圏の駅などではICOCAを使っても初乗り料金以上のチャージ額がないと入場できないので、注意が必要だ。

なぜ違いが生まれたのか

 事業者によって入場時に必要とするチャージ額が異なるのはなぜか。1円以上のチャージ残額で駅に入場できるICOCAを運営しているJR西日本の広報部・石原さんによれば、あくまで交通系ICカードのシステム設計時の仕様によるもので、特に利便性を意識したわけではないという。

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 「ICOCAはもともと入場時の残金にかかわらず、駅から出るときに運賃を引き落とす仕組み。システム設計時に利便性を重視する思惑があったのかは不明だが、結果的に便利と言われるような状態になっている」(石原さん)

 入場時点で初乗り運賃が必要となるJR東日本に対しても、あくまで別会社であり、何かを意識したということはないという。

 ネット上では、ICOCAの仕組みに「関西には人情や思いやりがあるからでは」といった反応が寄せられているが、石原さんの答えは「いいえ、仕様です」。関西圏ではこのことが当たり前であり、「ICOCAのおかげで助かった!」というような声が特別寄せられることもないという。

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