警察から連絡がないまま3カ月ほど経った。その間に出品者の男のFacebookから自転車関連の記事が消えてしまった。池袋署に問い合わせると、「事情を聞こうと出品者の男に電話したが、何も分からなかった」との回答。男は警察からの連絡に警戒し、証拠隠滅のためFacebookの投稿を削除したのかもしれない。警察はなかなか動いてくれない上に、男に逃げるスキまで与えてしまったのか……いら立ちが募る。
彼女がネット検索を駆使して出品者の男やその妻の勤務先を調べ上げ、電話をかけたこともある。警察が動いてくれないから自分で何とかする……そんな考えだったが、警察から「危険なので接見はしないように」と釘を刺され、動くことをやめた。
16年3月ごろ、署の担当者はやっと「出品者の男を逮捕する」と言い始めた。5月ごろに問い合わせると「男が逃げていて居場所が分からない」と情けない回答。「なぜ、私達が情報提供した時点で逮捕に踏み切らなかったのか」と腹立たしく思いながらも、待つしかなかった。
さらに5カ月経った10月15日。男が窃盗の疑いで逮捕されたことをテレビのニュースで知った。ヤフオクの取引ナビで見たあの男の名前が、テレビのテロップに表示された。「やっとつかまった!」。自転車が盗まれてから1年8カ月。オークションで落札してから1年経っていた。
犯人を追い詰めた被害者の執念は、新聞やテレビで採り上げられた。どの報道も、自転車の持ち主の男性が追い詰めたと伝えていたが、実際に追い詰めたのは彼女のほうだ。
逮捕された男は調べに対し、「盗んだロードバイクで走ると気持ちよかった」などと供述していたという。男は窃盗罪に問われ、東京地裁から17年1月、懲役2年6月・執行猶予4年の有罪判決を言い渡された。
犯人に言いたいことは? そう問うと、彼女は一言。
「人のものを盗むな」
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