スター・トレックのプロデューサーであるジーン・ロッデンベリーは既に故人だが、誤用の責任をどうとってくれるのだろうか。そんなことを考えながら調べていたら、面白いことがわかった。
ホログラムをスター・トレックに採用するのはもともとロッデンベリーのアイデアではなく、彼にそれを吹き込んだ人物がいたのだ。
ジーン・ドルゴフ氏。彼がインタビューに応じている動画も見つかった。
ドルゴフ氏は1964年からホログラムの研究を続けている科学者で、ホログラムの研究をしているうちに、干渉波を使ったその原理を拡張することで立体の保存と再生が、映像だけではなく実体を持った物質「マター・ホログラム」として可能になる未来がありうるのではないかと考え、それを1973年にロッデンベリーに語った。
それがホロデッキとなった。
つまり、本物のホログラム研究者が、現在のホログラムの延長線上に考案した、正統的な「未来のホログラム」。それがホロデッキ技術なのだ。
誤用されている「ホログラム」は、このホログラム研究者がホログラムの拡張として考えたマター・ホログラムによって実現するような世界をイメージしているのではないだろうか。
もちろん、ただ3Dイメージを使ったものをホログラムと呼ぶのは正しくない。しかし、視線を動かしても追従し、反応してくるような、「生きている感」3Dオブジェクトが目指すべきものだという指針はここで定着したのだと思う。
TNGで登場してDS9でも無造作に使われている携帯端末PADDはiPadにしか見えないし、初代シリーズ(TOS)から胸につけているコミュニケーションバッジ(コムバッジ)はタップして通信開始するし(多くのBluetoothヘッドセット)、コンピュータとのやり取りはエンジニアであっても「コンピュータ」と呼びかけて主に音声で行う(SiriとかAlexaとか)。「リラックスする音楽かけて」とかはわれわれがすでに普通に使っている。
いつか、ホロデッキに相当するような、仮想3Dオブジェクトと触ってやりとりできるような日はやってくるのだろうか。落合陽一さんが2015年に発表した、「Fairy Lights in Femtoseconds」では空気のプラズマ化でそれに近いことを実現している。
ところで、スター・トレックのテレビ新シリーズである「Star Trek: Discovery」は当初1月にプレミア放映されるはずだったのだが、夏の終わりから初秋にずれ込んだらしい。時系列的にはTOS(宇宙大作戦)の10年前で、ホロデッキ技術登場以前になるので、ホログラムネタは多分ないものと想像できるが、それでも楽しみだ。
宇宙。それは人類に残された最後の開拓地である。ホロスイートを管理しているフェレンギ人のクワークが「VRカノジョ」という新しいホロプログラムをオススメしていたから、Discoveryが来るまでの間、人類未踏の宇宙に勇敢に航海してみるとするか。
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