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記者から「上場廃止」「法的整理」を問われた東芝 それって何?(2/3 ページ)

» 2017年05月22日 15時20分 公開
[井上翔ITmedia]

「法的整理」とは?

 「法的整理」は裁判所が関与して会社の倒産(経営破綻)に関する手続きを進めることだ。

 「倒産」は一般に会社の経営が行き詰まった状態を指す。「行き詰まり」を解消できない場合は会社は消滅せざるを得ないが、解消できれば会社を存続させることもできる。「倒産=会社の消滅」というイメージを持つ人も少なくないが、必ずしもそうであるとは限らないのだ。

 法的整理には会社を再建するための「民事再生」「会社更生」と、会社を消滅させるための「破産」「特別清算」の計4種類が用意されている。

民事再生

 民事再生法にもとづく法的整理のことを「民事再生」という。裁判所に申し立てた後、一定の手続きを経た上で「再生計画案」を作成し、債権者集会でその承認を受け、裁判所から認可されることで再建が始まる。

 民事再生には他にも以下のような特徴がある。

  • 法人だけではなく個人も利用できる
  • 「株式会社」以外の形態を取る法人(合同会社など)でも利用できる
  • 既存の株主は株主の権利を留保できる
  • 原則として経営者を交代する必要がない(法人の場合)
  • 財産の管理・処分権を保有したまま再建できる(処分は裁判所が指名する「監督委員」の同意が必要)
  • 債権者による担保権の行使を原則として禁止できない(一定条件のもと「競売手続きの中止」や「担保権の消滅」を申し立てることはできる)

 民事再生の大きなメリットは経営者の交代が原則として不要で会社主導で再建できること、会社の資産を保持したまま再建が進められること、比較的早く再建を始められることにある。一方で、債権者・取引先が担保権を行使することで財産の一部を失う可能性を排除できないというデメリットもある。何より、債権者からの協力が得られないと再建計画を進められないという問題もある。

 なお、民事再生では再建計画が履行されない場合などに裁判所が職権で「破産手続き」を開始することもある

スカイマークは「民事再生法」を選択 民事再生は個人や中小企業を想定した制度だが、再建手続きをすばやく進められる観点から大規模な企業でも民事再生を選択するケースがある(画像はスカイマークが2015年に民事再生手続きを申請する際に出したニュースリリース

会社更生

 会社更生法にもとづく法的整理のことを「会社更生」という。民事再生よりも前からある制度で、裁判所が指名した「更生管財人」が主導して「更正計画」を作成し、債権者などから承認を受け、裁判所から認可を受けることで再建が始まる。

 会社更生には他にも以下のような特徴がある。

  • 株式会社のみ利用できる(他の形態を取る法人では利用できない)
  • 旧経営陣は原則として経営権を失う(→経営陣の刷新が必要)
  • 既存の株主は保有株主の範囲内で責任を取る(→新たな出資者が必要となる)
  • 財産の管理・処分権は更生管財人に移る
  • 債権者による担保権の行使は、更正手続きへの参加が必要となる

 会社更生の大きなメリットは、債権者から担保権を自由に行使される可能性がなくなることにある。一方で、経営陣の刷新が原則として必須であることや、既存株主は株主としての権利を失うというデメリットもある。何より、利害関係者との調整に時間がかかる傾向にあるという問題もある。そのため、昨今では民事再生で再建を目指すケースが多い。

JALの会社更生手続き 会社更生は新しい経営陣と出資者に“あて”がある場合に使われることが多い(画像は日本航空インターナショナルとジャルキャピタル【共に現在の日本航空】が会社更生手続きを申請する際に出したニュースリリース

破産

 破産法にもとづく法的整理のことを「破産」という。

 破産は債務者の資産と債権の状況を精査した上で、債務者の財産を処分して債権者に配当(≒債務の返済)を行う制度となる。そのため、債務者が自ら申し立てる「自己破産」だけではなく、債権保全の観点で債権者が破産を申し立てることもできる。

 法人の破産手続きが決定した場合、債務者の財産を管理・調査から債務者への配当までを行う「破産管財人」が裁判所によって必ず選定される。また、破産手続きが完了するとその法人は消滅することになる。

特別清算

 法人を解散する(任意で消滅させる)手続きにおいては、手持ちの財産や債務を清算する必要がある。会社法にもとづき、株式会社の清算手続きに裁判所が介入すると「特別清算」となる。

 特別清算は清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情が発生した場合、または清算課程で債務超過の疑いが発生した場合に清算人(※)のほか、監査役、債権者や株主が裁判所に申し立てることができる。

 手続きにおいて、清算人は財産状況の調査を行いつつ、弁済に関する「協定案」または個別の「和解案」を作成する。それが債権者集会で(和解案の場合は該当する債権者から)承認され、裁判所から認可を受ければ特別清算が成立する。

 清算自体が会社の消滅を意図したものであるため、特別清算の完了は当然に会社の消滅を意味する。

※「清算人」とは?

 「清算人」は、法人を清算する際にその職務を執行する人を指す。

 株式会社を清算する場合、清算人は1〜2人置く必要あり、基本的には清算前に代表取締役だった人が就任する(代表取締役を設けていない会社は取締役)。ただし、定款(会社の規約)で別の定めをしている場合、あるいは株主総会で別途選任手続きが行われた場合は、(代表)取締役ではなかった人が清算人となる場合もある。


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