産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、野球帽のつばの中にラジオを仕込んだ“ウェアラブルラジオ”のプロトタイプを開発したと発表した。独自技術で作成した「曲がるラジオ」を使って実現したという。
印刷技術と低温プラズマ焼結法(CPS)と呼ばれる技術を活用し、フィルム基板上に銅の配線を形成。その上にチップ素子を実装して曲げられるラジオを制作し、野球帽のつば内部に組み込んだ。作成したウェアラブルラジオは、軽量のためかぶっても違和感がなく、つばを曲げても問題なくラジオを受信できるという。
産総研によれば、印刷技術を応用して電子デバイスを製造する「プリンテッドエレクトロニクス」では配線に銀インクが用いられることが多く、コストがかかる上に短絡(エレクトロケミカルマイグレーション)しやすいなどの課題があった。従来も銀の代わりに銅インクを用いる技術はあったが、使えるインクが限られるといった課題もあったという。
そこで今回、銅と酸素が分離するような低酸素状態に酸化銅をさらして純銅を作り、大気圧プラズマで焼結するCPS法を採用。従来もインクジェット印刷用の銅ナノ粒子インクであれば焼結可能だったが、今回シルクスクリーン用の銅ペーストでも焼結できるよう改良を加えた。
新技術によってコストを抑えつつ、印刷・焼結の2ステップだけで配線板を作れるようになったという。産総研は2019年ごろをめどに、CPS法の高速化やフレキシブル配線板の量産化を目指すとしている。
ウェアラブルラジオのプロトタイプは「JPCA Show 2017」(6月7〜9日、東京ビッグサイト)で展示される。
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