6月7日に行われたマストドン作者によるSkype基調講演後、マストドンのコントリビューターである山岸和利さんがぼくが書いた記事のタイトルを英訳してトゥートしてくれた。それを読んでブーストしたオイゲンさんがこんな投稿:
さっきのブーストにはカンファレンスの画面が載っている。あそこでどういう感じでぼくが映っていたのか、これでやっとわかったよ。ぼくの見た目がひどい状態じゃなかったらいいけど >_<
それに対し、Ashokaさんという人が、「日本人は、オイゲン・ロッコと呼んでるよ」と日本での表記を指摘。それを読んだオイゲンさんは、
そういう表記なの? ロチコだったらちょうどいい発音になるんだけど。でもまあ少なくともファーストネームは日本語でちゃんと発音されてるけどね。
そこでぼくは彼に「記事を書いたものですが、かっこよく映ってましたよ。表記はロチコにしましょうか」とメッセージを送ったのだが、彼は「いやいや、そんな大きな問題じゃない。日本人向きに適切なものであればなんでもいいよ」と答えてくれた。
でも日本人にとってどちらも大きな差はないし、字数も変わらない。ならば正しい方がいい。なにせ、ぼくらがオイゲンさんを知って、まだ2カ月もたってないのだ。変えるタイミングが遅すぎるということはない。
なので、ITmedia NEWSではこれからオイゲン・ロチコさんという表記で行こうと思う。
Interop Tokyoというイベントは、参加者のほとんどがネットビジネスやセキュリティに関わるビジネスパースンだ。
新興SNSであるマストドンにとって完全にアウェイな状況だが、6月7日初日に国際会議場で行われたオイゲン・ロチコさんによる基調講演は500人満席。マストドンのアカウントを持っている人は3分の1程度、それ以外は名前を知ってはいても実態はつかめていない様子、ギークというよりはスーツな人たちが集まり、24歳のドイツ人青年の真意を探ろうとしていた。
基調講演を短く紹介した前回のつまみ食い日記で「彼は大丈夫だね」と書いたのは、こうしたビジネス系オーディエンスに対して、オイゲン・ロチコさんの考え方のブレなさ、脱中央集権化への強い意思が、動く姿と話によって、人間性を含めてきちんと伝わったよね、ということ。ビジネスに受け入れられるにはこういったことが肝要。
プログラマータレントの池澤あやかさんがコーディングのスタイルについてマニアックな質問をし、今後のロードマップについてのさくらインターネット総研所長の鷲北賢さんが聞いたのにもオイゲンさんは淀みなく受け答えしていた。こういうのも大事。角川インターネット総合研究所 主任研究員でマストドン騒動の生みの親である遠藤諭さんによる起用はうまくいったと思う。
マストドンはAGPLに基づいたオープンソース技術なので、彼がどこかの中央集権的企業入りして路線を変えたとしても(ありそうにもないけど)分岐した別のエンジニアたちが脱中央集権の流れを引き継いでいくだろう。
ベンチャーキャピタルにより資本を注入された新興SNS企業にありがちな、なにがなんでもスケールしなければという呪い、うまくいかなかったらピボットしてでも成功しなきゃ、イグジットさせなきゃというVCの呪いは、この仕組みであれば回避できる。
AGPLという過激な思想を持つライセンスが組み込まれているマストドンだが、個人から企業まで、サーバインフラからフロントエンドのアプリ、さらにIoTまで、さまざまなレイヤーで参加者が増えつつある。
2日目、6月8日の「ジャーナリスト座談会 〜マストドン現象と日本のネットの特殊性を考える〜」セミナーは会場内のオープンスペースで行われたが150人の席に立ち見が出るほど。
ぼくは主に、mstdn.jp、Pawoo、friends.nicoの御三家に始まるさまざまなインスタンスを挙げてその広がりを説明。日経テクノロジーオンラインの山田剛良副編集長は、マストドンがリチャード・ストールマンのGNU SocialとOStatusがベースになっている分散型のシステムをベースにしていること、中央集権化と分散化のサイクルにあるものだと解説。「これがマストドンだ!」を編集したインプレスR&D 山城敬編集長は、マストドンと広告ビジネスとの親和性について、m.toを事例に説明した。司会は遠藤諭さん(デフォルト)。
そして、企業・地域に焦点を絞った3日目(6月9日)のセミナー「マストドンによる企業・組織・地域の価値拡大」。「これがマストドンだ!」を発行したインプレスR&Dの井芹昌信代表取締役をモデレーターに、まずは遠藤さんがマストドンの概要を分かりやすく解説。次にロボットにフォーカスしたWebメディアのインスタンスを立てているロボットスタート中橋義博代表取締役が「やっていることで注目度が上がるが、コストもかかる」と自己分析、Redmineのコミュニティをマストドンで運営しているファーエンドテクノロジーの前田剛代表取締役はSlack、IRC、Discourseなどと比較した上でハードルの低さで導入したと語った。花開きつつある地方インスタンスの代表として、大阪丼管理人のalarkyさんも登壇し、大阪弁仕様のさまざまなカスタマイズを披露した。
ところで、「マストドン」ブリーフィング。ネーミングに疑問を持たなかったろうか? 多分、遠藤さんはどうしても「ドンブリ」としたかったのだ。
さらに、明日6月10日は、同じく遠藤さんが司会するマストドン会議3が開催される(チケットの販売は締め切られた)。オイゲン・ロチコさんが再びSkype出演し、今度はまつもとゆきひろさんとRuby師弟対談が期待されるほか、ぬるかるさん、さくらインターネット研究所の鷲北賢さん、そしてマストドン会議では初となるユーザーローカルの伊藤将雄さんが登壇し、おそらくリアルタイム検索やユーザーランキングについて話すはずだ。また、個人インスタンスとして、大阪丼のalarkyさん、ボカロドンのTOMOKI++さん、グルドン運営チームとしてぼくも出演する。
UEI清水亮さんは、Naumanniに実装した深層言語解析技術「Deep Analyzer」によるスパム報告・判別機能を当日披露してくれるそうだ。
動くオイゲン・ロチコさんは、ニコ生でも視聴できる。
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