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日本のフィンテック市場は“出遅れ” 目指すべき姿は「ハブ型」

» 2017年07月21日 14時14分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 「フィンテック市場の拡大に向け、日本は“ハブ型”を目指すべき」――コンサルティング企業のアクセンチュアは7月20日、世界のフィンテック投資状況を発表した。全世界のフィンテック市場は拡大傾向にあるが、日本の市場は出遅れているようだ。そうした現状を打破するには「フィンテックハブ」を形成する必要があるという。

 フィンテック(FinTech)は、電子決済サービス、人工知能(AI)による資産運用など、IT技術を活用した金融サービスの総称。アクセンチュアによれば、ここ数年、世界全体のフィンテック分野への投資額の伸びは落ち着きつつあるが、取引(ディール)件数は順調に伸びているという。

photo フィンテック投資額

 これまでフィンテック市場を先導してきたのは米国、英国。急伸するアジア・パシフィック地域のけん引役は中国で、「規制が緩いこともあり、サービスが次々と生まれている」という。これらの国々に対し、日本は出遅れている。各国の投資額とGDPの比率(2016年)は、中国が0.09%なのに対し、日本は0.004%と大きく差がついている。

photo 各国のフィンテック投資の比較

“ハブ型”とは?

 将来、日本のフィンテック市場を拡大するにはどうすべきか。アクセンチュアの村上隆文さん(戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター)は「香港やシンガポールのような“ハブ型”を目指すべき」と提案する。

 ハブとは、金融機関やフィンテックに関心がある一般企業、起業家、投資家などが集まる「中心地」のこと。「東京にハブを作ることで、スタートアップが単体で事業を進めるだけでなく、伝統的企業がそこと協力した新しいサービスを始めやすくなる」という。

 「ハブを作るのに必要なのは、イノベーション」と村上さん。金融機関だけでなく、スタートアップや他業種が出合い、協力しなければイノベーションは生まれないと指摘する。「東京は小さな面積の中にさまざまな業界があり、イノベーションを生み出しやすいマーケットになっている」

photo 村上隆文さん

 ハブの形成を目指すには、他国にはない日本固有のイノベーションをいかに作るかが重要という。「これまでフィンテックが成し遂げてきたイノベーションは、貧困者などの“金融弱者”がいかに金融サービスを使えるようにするか(金融インクルージョン)が多かった。だが、日本はそうしたニーズよりも、少子高齢化などの課題を抱える先進国。こうした課題の特性を生かしたイノベーションを行うのが重要ではないか」

 こうした取り組みを加速させるには、企業や投資家、行政や政府との連携が重要になるという。すでに香港やシンガポールでは、国や自治体を挙げてフィンテックハブとなるのを目指し、金融機関やスタートアップを集めたり、インフラ整備を進めたりしているという。

 「世界のフィンテック市場は、情報収集で終わらず、成果につなげていくことが求められる時期になってきている。短期間ではもうからないものも出てくるかもしれないが、目先の利益にとらわれずにビジネスを検討することが求められるのでは」

 「イノベーションは、単一の企業がただ目指せばいいというわけではない。それぞれがやるべきことをやり、成功を積み重ねていくのが重要だ。そうすることで、市場全体が立ち上がっていくのでは」

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