GMOインターネットが、ビットコインの採掘(マイニング)事業に参入する。独自開発の半導体チップ(マイニングチップ)を大量に利用し、マイニングセンターの拠点には北欧(詳細は非公開)を選んだ。「なぜ、いま参入を決めたのか」「今後の見通しは」――9月14日、同社の熊谷正寿会長(兼社長)が説明した。
「ビットコインなど仮想通貨には課題がある」と、熊谷会長は指摘する。
「ビットコインの改ざんを防止し、正しくブロックチェーンを動かすためのマイニングだが、マイニングには膨大な計算量と電力がかかる。火力発電で二酸化炭素を排出した電力でそれを行うのは、地球温暖化につながるなどマイナスの影響がある」(熊谷会長)
そこでGMOインターネットは、7ナノメートルプロセスの専用ICチップ(ASIC、特定用途向け集積回路)を国内のメーカーと共同で開発・製造。他社の主要製品と同じ計算性能で比べた場合、約56%の省電力化を実現したという。さらにマイニングセンターの拠点は、電気代が比較的安く、地熱発電など再生可能エネルギーのみで電力をまかなえるという北欧の某所を選んだ。
環境に負荷をかけない「場所」と、ビットコインのマイニングに特化した省電力チップ開発のめどがついたことから、参入を決めたという。
「仮想通貨による利益は雑所得に当たる」という日本の税制や、仮想通貨発行による資金調達(ICO)を禁止した中国など“逆風”をどのように考えているか――という記者からの質問には、「規制により確かにビットコインの価格は50万円から40万円程度まで落ちたが、13日時点で45万円程度で推移している。むしろ、これだけの逆風でもこれしか下がらないのかと安心している」と熊谷会長は楽観的な見方だ。
北欧に建設するマイニングセンターは、500ペタハッシュ/秒(50万テラハッシュ/秒)の計算性能を保有するとしている。これはビットコイン全体の計算量の約6.3%にあたる。それをGMOインターネットが担うのは、ビットコインの発展する方向に対して影響力を持つことになるのではないかと、記者からは指摘が出た。
これに対し、熊谷会長は「GMOインターネットがビットコインに対して何か口出ししようという意図は全くない」と否定する。「むしろビットコインの発展に貢献したく、コミュニティーの皆さんから学ばせていただきたいと考えている」と、ビットコインコミュニティーの意思決定に寄り添った考えを示した。
熊谷会長によれば、これまで専用チップにかかった開発費や、北欧での設備投資に必要な額を合わせると、イニシャルコストは約100億円になる見込み。
汎用的なグラフィックスカードや他社製の専用チップを用いず、独自開発したのは「他社製のチップを用いても事業として他社に勝つことができない。勝つためには、チップごと開発する必要があった」(熊谷会長)からという。
今回開発した専用チップは、ビットコインのマイニング時に計算するアルゴリズム「SHA256」のみに対応したものであるため、他のアルゴリズムを採用する仮想通貨はマイニングできない。今後は「イーサリアム」などアルトコインに対応した専用チップの開発も検討していくという。
専用チップ搭載マイニングボードを一般向けに販売することも視野に入れる。PCIeインタフェースで一般的なマザーボードに刺せる。Windows版とLinux版を用意したいという。マイニングボード1枚の計算能力は8テラハッシュ/秒で、消費電力は300ワットを想定。価格は未定だが「よりリーズナブルな価格で出したい」としている。
その他、レンタル料を払うことでマイニングセンターの計算リソースの一部を借りられる「クラウドマイニング」や、ユーザーが計算リソースを提供することでそれに応じた収益が得られる「マイニングプール」機能も構想している。
「弊社で計算力を独占するということではなく、ビットコインに期待を持つ皆さんに使っていただけたら。それが“非中央集権化”をうたう仮想通貨の理念でもあると思う」(熊谷会長)
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