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アプリで操作できる電子ピアノ、ヤマハが開発 オーディオ音源で楽譜を自動作成

» 2017年09月27日 10時38分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 さまざまな音で演奏できる電子ピアノ。一般的なものは音色や機能に合わせてたくさんのボタンがずらりと並んでいるが、それら全てをスマートフォンやタブレット専用アプリにまとめ、操作できるようにした電子ピアノをヤマハが開発した。「Clavinova」(クラビノーバ)の新モデル「CSPシリーズ」(10月24日発売)だ。価格は22万円(税別)から。

photo 「Clavinova CSP-170」のホワイトウッド調仕上げ

 本体には電源ボタンとボリューム調節用のつまみ、ファンクションキーが1つ付いている。音色やエフェクトの選択など、ほとんどの操作はスマホ、タブレット向けの専用アプリ「スマートピアニスト」で行う。発売時点ではiOS版のみを提供、Android版は2018年春にリリース予定。

 選べる音色は、グランドピアノだけでも、ヤマハのコンサートグランドピアノ「CFX」、ベーゼンドルファー(オーストリア)の「インペリアル」などさまざま。本物のピアノのように蓋を全開、半開、全閉の三段階から選択して音を調整できる。ギターやバイオリン、トランペットなど別の楽器の音色への切り替えも、全てアプリで行える。

photo グランドピアノの蓋も、タブレット操作で開閉

 こうした基本操作以外にも、CSPシリーズには大きな特徴がある。スマホやタブレットに保存した曲から演奏用の楽譜を自動作成してくれる「オーディオ・トゥー・スコア機能」だ。

photo オーディオ・トゥー・スコア機能

 アプリ経由でスマホやタブレットに保存しているオーディオ音源を読み込ませると、コード進行を読み取り、数秒間で伴奏用のピアノ譜(40種類)を自動作成。「ベーシック1」「スロージャズ」「ポップロック」など好きな楽譜を選んで表示し、ピアノ本体のスピーカーから音源を流しながら演奏できる。ヤマハミュージックジャパン西英行さん(鍵盤・管弦打営業部ピアノ・EKBマーケティング課)は「自分もバックバンドの一員になったような楽しさが味わえる」と話す。

photo 楽譜のバリエーション

 曲の速さや調(キー)も変更できるほか、楽譜上には音源に合わせてオレンジ色のバーが表示され、今弾いているところがどこなのか分かるようになっている。このバーをタッチ操作で移動させ、任意の場所から音源の再生・演奏を始めることも可能だ。

 演奏をサポートする機能として、楽譜に合わせて鍵盤上部のライトが流れるように光る「ストリームライツ」も搭載。次に弾くべき鍵盤はどれか、2拍先までライトが点灯して教えてくれるため、楽譜が読めない人でも簡単に演奏できるという。

photo ストリームライツ
ライトが弾くべき鍵盤を教えてくれる

 また、オーディオ・トゥー・スコア機能で作成した楽譜を使った弾き語りも可能。ユーザー自ら演奏しながら歌えるだけでなく、元の音源からボーカルの音量だけを下げる「メロディーキャンセル」機能を使えば、バックバンドも加えた弾き語りが楽しめる。

 鍵盤は、グランドピアノの弾き心地を再現したという木製鍵盤「ナチュラルウッドエックス(NWX)鍵盤」(CSP-170)と、ピアノ本来の自然なタッチ感を目指した「グレードハンマー3エックス(GH3X)鍵盤」(CSP-150)の2種類。「黒鏡面つや出し仕上げ」「ブラックウッド調仕上げ」「ホワイトウッド調仕上げ」との組み合わせで、計6モデルを用意する。初年度は計2000台を販売予定。

 搭載する音色は692種類。本体内蔵曲は403曲だが、スマホやタブレットの「iTunes」登録曲や「Dropbox」保存曲を利用したり、「ヤマハミュージックデータショップ」からMIDIデータを購入したりもできる。

「1人でも多くの人に、ピアノを弾ける喜びを」

 CSPシリーズのメインターゲットは「音楽は好きだけれど、演奏経験はあまりない大人」という。ヤマハミュージックジャパンの山本信人さん(鍵盤・管弦打営業部 副部長)は「これまで電子ピアノといえば、子どもの練習用に購入するケースが多かったが、近年は大人が自分の趣味で購入するケースが増えている」と話す。

 「今趣味としてピアノを弾いている人だけでなく、しばらく楽器に触れていない人や未経験の人でも、好きな曲のピアノ演奏を楽しめる“全く新しい電子ピアノ”として提案したい」(山本さん)

 開発時も「楽しんで演奏できること」に重点を置いたという。ヤマハの柳川貴央さん(電子楽器事業推進部)は「オーディオ・トゥー・スコアは“世界初の機能”だが、技術があまり目立たないようにし、お客さまに楽しんでいただくことを最優先にした。ピアノを弾ける喜びを多くの方に伝えたい」と話す。

 「ピアノは弾くのが難しそう、幼いころから練習していないとできない、と思う人もいるが、大人になってからでも好きな曲で練習しながら楽しんでいけることを伝えたい。1人でも多くの人に、ピアノを弾ける喜びを知ってもらえれば」(柳川さん)

photo 左から、ヤマハミュージックジャパン西さん、ヤマハの柳川さん、ヤマハミュージックジャパン山本さん、Clavinova CSPシリーズのイメージキャラクターを務めるダンサーのSam D.B.さん

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