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「Excelが固まった」 14万件のデータ、手作業でまとめ……神社・お寺の口コミサイト「ホトカミ」の挑戦(1/3 ページ)

» 2017年10月06日 10時30分 公開
[岡田有花ITmedia]

 日本国内のお寺や神社の数とコンビニの数。どちらが多いか、ご存じだろうか?

 実は寺社の方が、コンビニの3倍もあるのだ。

画像 寺社とコンビニの数(「ホトカミ」のWebサイトより)

 文部科学省の「宗教年鑑 平成28年度版」によると、全国の神社・寺院の数は合計約16万。コンビニの総数約5万5000の3倍近い。

 数だけ見ればコンビニより身近なはずの寺社だが、「コンビニの3倍、寺社を訪れている」という人はあまりいないだろう。お寺の檀家や神社の氏子も減っており、2040年には寺社の4割が消滅するとも言われている。

 「寺社が消滅すると、その町の文化や歴史、地域のつながりも失われてしまう」――こんな危機感を抱き、立ち上がった若者がいる。寺社の口コミ投稿サイト「ホトカミ」を運営するベンチャー企業・DO THE SAMURAI代表の吉田亮さん(27)だ。

画像 吉田さん。雨の日以外は和服で出社するという

 ホトカミは、神社やお寺にお参りした記録を、写真とともに投稿できるサイト。寺社の名前や住所(寺の場合は宗派も)を14万4000件も収録した。著名な寺社だけでなく、町中にある中小の寺社まで網羅し、その数は「日本一」を自負している。

 ユーザー登録すれば、寺社で撮った写真やお参りの思い出などを投稿できる。「本堂が立派」「お祭りが楽しかった」といった感想から、「池に亀がたくさんいた」などちょっとした情報、御朱印の写真など、ガイドブックや公式サイトには載っていない生の声が寄せられており、今年4月のオープンから半年で7000投稿を超えた。

画像 「ホトカミ」トップページより
画像 新着の口コミより

 14万超の寺社のデータを1人でExcelにまとめ、寺社ならではの事情に配慮し……「寺社口コミサイト」という前代未聞の取り組みは、試行錯誤の連続だった。

寺社と人の「ご縁」、Webでつむぎたい

 NHK大河ドラマ「利家とまつ」にハマったことがきっかけで、小さいころから歴史が好きだった吉田さん。東京大学在学中には寺社や史跡のツアーを主催したり、歴史を面白く語る楽曲を自作し、イベントやライブハウスなどで披露してきた。

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大学在学中に制作・披露していた楽曲の1つ「ダンシング江戸時代」(2014年のイベントより)

 活動の中でよく、こんな相談を受けたという。「実家のお寺を継ぐ人がいなくて困っている」「檀家さんが減ってしまって経営が苦しい」「うちの神社のお祭りが縮小し、参拝者も減っている」――。その一方で、吉田さんが主催する寺社や歴史ツアーは毎回、満員御礼状態。「お寺や神社にもっと行きたい」という人の多さも実感していた。

 このギャップを解消し、寺社を応援できないか――寺社の口コミサイトを発案したのは、こんな思いからだ。「食べログ」の評判を見て、その店に訪れる人が増えるように、寺社の口コミサイトを作れば、寺社を盛り上げられるのでは――と考えた。

 「来てほしい寺社と行きたい人の“ご縁”をつむぐことができれば、両方ともめっちゃうれしい。その結果、神社やお寺が将来も残っていけば、未来の人もうれしいはず。僕はこれに賭けよう」

14万件の寺社情報、3カ月かけ整理 「Excelが固まった」

 サイトを作り始めたのは昨年10月ごろ。まず、寺社名や住所といった基本情報を手作業で集め、データベース化していった。

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