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» 2017年10月06日 10時30分 公開

「Excelが固まった」 14万件のデータ、手作業でまとめ……神社・お寺の口コミサイト「ホトカミ」の挑戦 (2/3)

[岡田有花,ITmedia]

 「神社やお寺のリスト、持っている人はいませんか?」――TwitterやFacebookでこんなふうに声をかけ、寺社マニアなど多くの人からリストを提供してもらった。集まった寺社情報は14万4000。「当時はデータベースの知識がなかったので」手作業でExcelにまとめた。1人きりで、3カ月かかったという。

 入手したリストはほとんどがCSV形式。MacbookのExcelで開くと「めっちゃ文字化けした」と笑う。WindowsのExcelやMacの表計算ソフト「Numbers」で開いてみるなど、あらゆる手段を試して整えていった。

画像 同名の寺社は全国に多数あり、例えば「愛宕神社」と検索すると600以上もヒットする。ホトカミは、同名の寺社も住所などから正確に分別している

 全データを1つのシートにまとめるのも大変だった。「Excelって、1万行ぐらいコピペすると固まってしまうんです。1回コピペするにも3分ぐらいかかるので、読書しながらコピペしたりしていました」

 ようやくまとめ終わると、エンジニアに頼んでデータベースに登録し、サイトに実装していったが、また問題が起きた。登録した情報を基にGoogle Mapで位置を取得すると、3万件もエラーが出てしまったのだ。

 一部のデータが古く、市町村合併などで住所が変わっていたことが原因だ。「どうすれば」……解決策は意外なところに転がっていた。「年賀状ソフト」だ。

 年賀状ソフトには、旧住所を新住所に変換する機能が備わっている。ただ、大量に同時入力処理すると処理が追いつかず固まってしまうので、「2000件ぐらいずつに小分けして変換しました」。

 歴史や寺社の知識もフル活用してデータを整理した成田山新勝寺の「成田山」など「山号」をどう扱うかや、高野山金剛峯寺の「奥の院」など、大きな寺社の中に小さな寺社が含まれている場合どう分けるか――など、歴史の知識を総動員して判断していったという。

 データベース構築などバックエンドはエンジニアの友人に頼んだが、フロントエンドは自分で書いた。プログラミング経験はなかったが、本やWebサイトを使って4日間集中的に勉強し、だいたい身につけたという。

「カミホト」か「ホトカミ」か……寺社サイトならではの配慮

 配慮したことも多い。サイト名の「ホトカミ」は「神社」の神様を表す「カミ」、「お寺」の仏様を表す「ホト」の組み合わせだが、その順番にも悩んだ。「カミホト」だと「神フォト」にも聞こえてしまうと考え「ホトカミ」にしたが、説明文では「神社・お寺の投稿サイト」と逆順にすることで、平等になるよう配慮した。

 寺社を評価する機能は避けた。神職・住職など寺社の関係者は、点数などで評価されることに抵抗が強い。一般ユーザーが知りたいのは、寺社の雰囲気や参拝の可否などであり、評価ではないとも判断した。

 場が荒れないための工夫も施した。ホトカミの投稿フォームには「個人的な思い出、感想を投稿しよう」と書かれている。あくまで個人的な内容を投稿してもらうことで、歴史認識に関する論争などが起きにくいようにするための配慮だ。「歴史認識は専門家の間でも一致しないことがあるぐらい難しい問題。素人が議論しても、何も良い結果を生まない」と吉田さんは言う。

画像 投稿フォームは「個人的な思い出、感想」の投稿を推奨
画像 寺社の解説文は「中学2年生でも読めるよう」に書いてほしいという
画像 「あなたでも神主さんになれる方法」より

 寺社の解説文をユーザーが投稿することもできるが、投稿フォームには「中学2年生でも読めるような伝わりやすい言葉で表しましょう」と記載。簡単な言葉で表現してもらうことで、寺社をより身近に感じてもらいつつ、難しい言葉を使った論争が起きづらいよう工夫している。

 「あなたでも神主さんになれる方法」「座禅の心得と、都内で座禅できるお寺」「宮司さんインタビュー」など、読みものコンテンツも充実させている。読みやすい記事を通じて、一般の人が感じている「寺社への近づきづらさ」を縮めたいという思いからだ。

「投稿にはお金以上の価値がある」

 サイトは17年4月にオープン。当初は利用が伸びず、つらい時期を過ごしたが、ユーザーの声を聞きながら地道に改善し、投稿も閲覧も徐々に増加してきた。

 投稿には吉田さんがすべて目を通し、初投稿した人には全員にメールを送っているという。「投稿には、お参りをした時の想いが詰まっているし、手間をかけて一つ一つ書いていかないといけない。投稿にはお金以上の価値があるのでは」。そんな風に思っている。

 数の拡大だけを目指すなら、アルバイトを何人も雇って口コミを書いてもらうなど、一気に情報量を増やすことも可能だが、そういった手段は採るつもりはない。「それだと“思い”が乗っていない。思いがあることで、じわじわやりたい」

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