ヤマハ発動機は10月25日、二輪車を操縦する人型ロボット「MOTOBOT Ver.2」が、時速約200キロでのサーキット走行に成功したと発表した。二輪ロードレース「MotoGP」のトップライダー、バレンティーノ・ロッシ選手とも対戦し、1周3マイル(約4.8キロ)のコースで約30秒差まで迫った。
バイク本体は改造せず、人型ロボットがあくまで人間と同じように操縦するのが特徴。GPSなどで現在位置を把握し、ロボットがステアリングやアクセル、ブレーキ、シフトペダルなどを自ら操作し、自律走行する。15年の東京モーターショーに初出展した「Ver.1」(最大スピードは時速100キロ程度)から改良を重ねた。
「胃が痛かった」――開発を担当したヤマハ発動機の西村啓二さんは、そう振り返る。約3年間にわたる挑戦の舞台裏を、西村さんとプロジェクトマネージャーの西城洋志さんに聞いた。
あらかじめMOTOBOTは、コースの立体的な地図データ、理想的な走行の軌跡を学習。その上で(1)GPSで走行中の位置を把握、(2)立体的な地図データと照合、(3)シミュレート通りにハンドルなどを操作――という流れで自律走行する。目標は「サーキット限定でとにかく早く走らせること」だ。
ただ、理論通りにスピードが上がるとは限らず、バイクが走るべき軌跡を何度も見直し、トライ&エラーを繰り返した。西城さんは「トライ&エラーのリスクが異様に高いこと」が苦労したポイントだと語る。
というのは、同じ自動運転でも「クルマ(四輪)は、エラーが起きればすぐに止めればいいが、バイク(二輪)はすぐには止まれるとは限らない」(西城さん)からだ。高速走行中、タイミングが悪い地点でエラーが起き、走るのを止めると「『ガチャン』と倒れるどころか、クルクルと回転して全損する恐れがある」(西村さん)。
「全損は3回ほどあった」と西村さん。前モデル「Ver.1」のスピードは、時速100キロ程度で、直線や簡単なスラロームを走るレベルだった。しかし新型は、アップダウンがあり、ヘアピン(急カーブ)があるサーキットを時速200キロで走行するという目標に挑んでいた。「速度を上げていくと、急激にリスクが高まった」(西城さん)
西城さんは「私たちからすると、MOTOBOTは子どものようなもの。トライ&エラーは必要だが、彼が壊れる姿を見るのは辛かった」と苦笑いする。
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