軌跡のシミュレーションで苦戦する一方、メカの部分で改良したポイントがある。ロボットのボディー全体をカーボン製にし、軽量化と剛性アップを図った。「時速200キロを目指すとなると、走行中の振動も大きくなる。構造が弱いとボディーがたわむ」(西城さん)
ロボットの腕などには、人間の筋肉に相当する「アクチュエーター」が組み込まれている。振動などでボディーがたわむと、アクチュエーターの位置が動き、誤作動を起こす可能性もあることから「より拳に近い場所にアクチュエーターを組み込む」など、制御性を高めたという。「ソフトウェアの改良で解決できない部分は、メカの部分で対策した」(西村さん)
苦難の連続だったが「だからこそチャレンジする意味があった」(西城さん)。MOTOBOTは、人間のライダーのように体重移動してバランスを保つ仕組みは持っていない。高速走行中、カーブを曲がりながら転ばないようにするには――そんな制御技術が「人間のライダーが不安なくバイクを楽しめる技術につながる」という。
「オートバイは“怖い”というイメージがある。馬のように乗り、意のままに操れるようにアシストするには、と真剣に考えている」(西城さん)
“無改造の車両”をロボットが操ることにも意味がある。MOTOBOTOは、人間に近しい動きで実際に操縦するため、車両の動きと一緒に「搭乗者がどう動くか」というデータも取得できるという。「急に曲がる」など、人間のドライバー相手には難しいアグレッシブな指示にも対応でき、新車種の開発に役立てる考えだ。
ヤマハ発動機はモーターサイクル部門がメインビジネスだが、西城さんと西村さんは産業ロボット分野の出身。プロジェクトのスタート地点には「ロボットとモーターサイクルを組み合わせたい」という思いがあった。
上司からは「(挑戦するからには)高い目標で」と後押しを受け、車体にロボットを組み込むのではなく、二輪車を運転できるロボットにすることが決まったという。「このプロジェクト自体、技術者を高ぶらせてくれるところがある。3年間、心が折れそうでも『心配するな』とトップが後押ししてくれた。『失敗から学べ』と」(西城さん)
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