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自腹切っても「楽しいから」……アキバで“流通”する仮想通貨「モナコイン」の謎(1/4 ページ)

» 2017年11月13日 10時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

 仮想通貨といえば「ビットコイン」が代表格だが、ほかにもさまざまな仮想通貨が開発され、ビットコインとは違った特徴を競っている。そんな中、特徴的な広がりをみせているのが、日本発の「モナコイン」(モナーコイン・Monacoin)だ。

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 その名の通り、「2ちゃんねる」発のネコキャラクター「モナー」が由来の仮想通貨。コインのイメージイラストにはモナーが描かれ、ほんわかした雰囲気だ。その冗談みたいなネーミングや2ちゃんねるという出自から、“お遊び”コインと思われ、「ニートのおはじき」などとバカにされることもある。

 だが、今年に入って価格は急騰。1月には3円前後で取引されていたが、春にビットコインに先駆けて「Segwit」(取引データの圧縮)を導入したことで注目を浴び、10月には日本の仮想通貨取引所最大手「bitflyer」に上場したことで話題に。一時700円以上の高値を付け、「価格が急上昇した仮想通貨」として知られるようになった。

画像 モナコインの価格チャート(Zaif Exchangeより)

 モナコインの真価は、値上がり率ではない。その実用性だ。モナコインを使ったサービスを日本のエンジニア有志が多数開発しており、広く使われているのだ。その規模は「仮想通貨コミュニティーとして国内最大級」とも言われるほど。モナコインのファンは「モナコイナー」と呼ばれ、普及のために身銭を切る人も少なくない。

 今年10月末。あるモナコイナーが、約130万円もの自腹を割き、東京・秋葉原の公衆ビジョンで、モナコインの動画広告を流した。その広告を見るため、全国各地のモナコイナーが秋葉原に集合。自腹で作ったグッズを無償で配る人もいた。

 なぜ、彼らはそこまでして、モナコインを盛り上げようとするのか。「モナコインが値上がりすれば、手持ちのモナコインの含み益で儲かるから」――だけではない。

 彼らを熱くさせるのは、モナコイン独特の「面白さ」だ。

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開発者は「わたなべ氏」 “投げ銭”サービス広がる

 モナコイン誕生は2013年末。2ちゃんねるの「ソフトウェア板」に登場し、2014年に正式リリースされた。「ライトコイン」(Litecoin、元Googleの社員が開発した仮想通貨)をベース作られており、取引処理のスピードが高速なのが特徴。ビットコインの6倍超の速さで処理できる。開発者は「Mr.Watanabe」(わたなべ氏)を名乗っているが、素性は明かしていない。

 リリース直後から、有志の個人が、モナコインを使ったさまざまなサービスを開発しており、活発に利用されている。主な用途は、相手への評価や感謝を伝える“投げ銭”。掲示板やブログ、Twitterで、面白い投稿に投げ銭できるプラットフォームがそろっているのだ。

画像 掲示板サイト「Ask Mona」。「モナコインをばらまく」人が多数いる
画像 Ask Monaでは、メッセージとともにモナコインを送ることも可能。「114」(いいよ)、「5963」(ごくろうさん)、「39」(サンキュー)など、送金額にメッセージを込めることも一般化している

 例えば、掲示板サイト「Ask Mona」は、気に入った投稿に「いいね!」する代わりに、モナコインを投げ銭できる。人気の投稿は文字が太くなったり文字色が変わったりして目立つほか、モナコインをあげたりもらったりするとユーザーの「段位」が上がる仕組みで、「モナコインまくよー!」と他人に無差別にモナコインを配る人も毎日のように現れる。

 「評価の高い投稿をすると仮想通貨がもらえる」という設計のサービスとしては、ICO(Initial Coin Offering:仮想通貨による資金調達)で4億3000万円を集めて話題になった「ALIS」があるが、ALISは企画だけで資金を集めており、サービスは未公開。Ask Monaはこれを、2014年から実サービスとして展開しているのだ。

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