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「昔のニコ動に戻りたい」は叶わぬ夢か 運営とユーザー“温度差”のワケ(5/5 ページ)

» 2017年12月01日 09時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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「ニコニコ動画」、2度目の曲がり角

 これほどユーザーと運営の温度差を感じたのは、実は初めてではない。

 ご存じの読者もいるだろうが、11年に「ニコニコ大惨事」と呼ばれる事件が起きた。大規模公開イベント・生放送「ニコニコ大会議」が行われていた裏で、ニコニコ動画が視聴できない不具合が発生。「ニコニコ動画なのに動画が見られないのはおかしい」「リアルイベントに金を使って本業がおろそかになっている」などの批判が殺到し、ユーザーの運営への不信感が高まっていた。

 ニワンゴ(当時)の取締役だった西村博之氏は、ITmedia(当時)の岡田有花記者のツイートを受け、「ニコニコ動画が曲がり角な件」と題するブログを公開。「システムをきちんと使ってネット上のユーザーに満足してもらうというのを後回しにして、コンテンツやイベントに注力するのは、大きな方針転換だし、曲がり角だよなぁと思う」とコメントしていた。

 しかし、その後もニコニコ動画はプレミアム会員数を増やし、成長を続けてきた。今回のニコキャスは、リアルイベントではなく新しいシステムの提案だったが、残念ながら従来のユーザーには思うように刺さらなかった。

 「(く)は失敗できないサービス。機能や内容などを考慮し、サービス延期の決断に至った」と川上会長も並々ならぬ意気込みを語ったが、リアルタイムで飛び交うユーザーのキツい反応に一番戸惑ったのも川上会長本人だろう。

川上会長

 niconico、いやニコニコ動画は2度目の曲がり角に来たのかもしれない。

 昔のニコ動に“原点回帰”するのか、若いスマホユーザー向けに新生niconicoとして生まれ変わるのか、それとも両方を実現する茨(いばら)の道を行くのか。16年12月12日に10周年を迎えたニコ動。これからの10年はどうなるのか。

 11月30日に公開した「niconicoサービスの基本機能の見直しと今後に関して」と題するお知らせで、川上会長は発表会後に初となる公式コメントを掲載。「我々運営が積極的に取り組まなければいけない基本的な部分がおざなりになっていた事、ユーザーの皆さんの不便や不満点に十分目を向けてられていなかった事について改めて深くお詫びさせて下さい」と謝罪した。

 また、10年前に掲げた「ニコニコ宣言」を引き合いに出し、「ちょっと他とは違う、ちょっと不思議で独特なサービスや機能も模索し続けていきたい」とも語る。

 ただ、記者には1つ疑問がある。それは登壇者の3人が普段どれほどniconicoを使っているのかということだ。川上会長は、もうniconicoをあまり使っていないのではないか?──そんな疑念がよぎる。

 12月1日、西村博之氏はブログで「一般ユーザーと経営者の乖離」と題するエントリを公開。「そもそも経営者というのは多忙なので、ネットを長時間見たり、ネット上で何かを作ったりする暇人の気持ちなど普通わからない」とし、今は「ユーザーの気持ちのわからない経営陣が判断権限を持ってる」と率直に語った。

 最近では、3月25日に配信されたテレビアニメ「けものフレンズ」の振り返り一挙放送が、歴代ニコニコアニメスペシャル史上最多コメント数である270万を突破し、話題となった。今はドワンゴ社内がまさしく“ドッタンバッタン大騒ぎ”。

 みんなが愛したニコニコ動画に復活のときは来るか。

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