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最古の首長竜、ドイツで発見 “大量絶滅”生き延びた可能性

» 2017年12月21日 15時44分 公開
[ITmedia]

 ドイツの地層から世界最古の首長竜(プレシオサウルス類)の骨格化石を発見したと、東京大学などの研究グループが12月19日に発表した。首長竜が出現したと考えられていたジュラ紀よりも古い三畳紀の地層から見つかり、新種と判断して「ラエティコサウルス・メルテンシ」と命名した。

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 首長竜は中生代に繁栄した海生爬虫類。翼状のひれあしを4枚持ち、羽ばたくように泳いでいたと考えられている。これまで首長竜は、ジュラ紀(約2億100万年前〜1億4500万年前)に出現したと見られていたが、新種は三畳紀最末期(約2億500万年前)の地層で発見。三畳紀末には、地球上の生物が“大量絶滅”したとされるが、首長竜は生き延びた可能性があると判明した。

photo 三畳紀後期に絶滅した海生爬虫類の主要グループと、首長竜類(ラエティコサウルス)出現の前後関係

 さらに近縁の爬虫類の特徴を基に、首長竜の進化系統樹を導き出したところ、三畳紀末には主要な2系統が登場するなど、多様化が進んでいたことが分かった。首長竜の起源はさらにさかのぼると考えられるという。

 発見したラエティコサウルス・メルテンシの推定体長は約2.4メートル。ジュラ紀の首長竜であるプレシオサウルスと同じように、柔軟性の低い首や翼状の四肢、ずんぐりとした体幹部、短い尾など、外洋で効率よく泳ぐのに適した特徴を持っている。

 このような特徴を持った三畳紀の海生爬虫類が他にないことから、最古の首長竜だと結論付けたという。また、これまでの首長竜類にはない特徴が見られたことから、新属・新種と判断した。

 研究グループが、ラエティコサウルス・メルテンシの骨を切断し、顕微鏡で観察したところ、骨の内部には放射状に高密度で発達した血管の痕跡など「急速に成長した証拠」が見つかった。同様の骨組織は、ジュラ紀や白亜紀の首長竜からも発見されている。

photo ラエティコサウルスの大腿骨の組織切片

 急速な成長は、体内で発生した熱で体温調節できる「内温性動物」だけに見られるため、首長竜は三畳紀のうちに「内温性」を獲得したと考えられるという。ラエティコサウルスを含む首長竜は、爬虫類としては珍しく体温を高く保つことで早く成長していたと、研究チームは分析している。

 首長竜類が三畳紀末の“大量絶滅”を生き延びた要因は分かっていないが、こうした短期間でも成長できる点や、外洋で遊泳生活を行うなどの特徴が影響した可能性もあるとしている。

 ラエティコサウルス・メルテンシは「メルテンス氏のレート階の爬虫類」という意味。化石が見つかった三畳紀末の時代区分「レート階」と、化石発見者のマイケル・メルテンス氏から命名された。

 研究チームには、ドイツのボン大学、岡山理科大学、パリ国立自然史博物館、東京大学が参加。研究成果は米科学誌「Science Advances」(電子版)に12月13日付で掲載された。

【訂正履歴:2017年12月21日17時50分更新 ※初出時、「三畳紀末には、地球史上最大の“大量絶滅”が起きた」としていましたが、地球史上最大の大量絶滅が起きたのはペルム紀末の誤りでした。三畳紀末にも大量絶滅は起きたとされますが、ペルム紀末のものとは異なります。お詫びして訂正いたします】

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