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「虫歯になってから歯医者に行く」は間違い 富士通らが提案する新しい歯科の使い方

» 2017年12月25日 14時02分 公開
[太田智美ITmedia]

 「虫歯になってから歯医者に行くのは間違い。日本人の約8割が1日2回以上歯磨きをしているのにもかかわらず、虫歯になるのはなぜか。それは、歯医者の利用の仕方が根本的に間違っているからだ」――日吉歯科診療所の熊谷崇理事長はこう話す。

 サンスターグループと富士通は12月25日、IoTスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」(ガム・プレイ)と富士通の歯科医院向けクラウドサービスを連携した予防歯科サービスを発表した。富士通のクラウドサービスにある患者の口腔情報とG・U・M PLAYから取得した歯磨き情報を連携することで、歯科医師や歯科衛生士はより患者に合った歯科指導ができるという。25日から販売を受け付け、2018年1月31日から提供する。


富士通「G・U・M PLAY」

富士通「G・U・M PLAY」

 G・U・M PLAYは、16年4月に発売した歯ブラシ装着型デバイス。歯ブラシの柄の部分取り付けると、歯ブラシの動きをセンサーが認識し、専用アプリと連携することで歯磨きの状態を記録・分析できる。

 今回の発表に合わせてリリースされた新アプリでは、歯科医院での検診結果をもとに歯垢残存量に合わせてレベル1〜3まで歯1本ごとに設定可能。磨き残しの多い部分を可視化し、部位ごとに歯磨き時間を設定できる。


富士通「G・U・M PLAY」

 富士通の歯科医院向けクラウドサービスでは、レントゲン写真や口腔内写真などのデータを、同社データセンター内のクラウド環境にアップロード。「歯の健康ファイル」として管理し、情報を患者と共有できる。「歯の健康ファイル」は患者のPCやスマートフォンからいつでも閲覧可能で、現在約50の予防型歯科医院で利用されているという。ここにG・U・M PLAYによる日々の歯磨きの様子を連携させることで、ホームケアを徹底させる狙いだ。医師の画面からは、いつ、何分磨いたかが、一覧で表示される。

 「来院時、『1日2回、3分磨いています』という患者さんがほとんどですが、磨けている患者さんとそうでない患者さんがいます。その原因を把握するために、本当に磨いているけど磨けていないのか、磨いているつもりだけど時間が足りないのか、あるいは回数が少ないのか。もしこの原因が分かれば『最近頑張っていますが、ちょっと前は忙しかったみたいであまり磨けていませんでしたね』といったコミュニケーションも可能になります」(日吉歯科診療所の歯科衛生士)

 サービス料金の設定は、サービス提供者である富士通側が患者からもらうことはなく、各医院に任せるという。予防歯科団体を軸に、20年までに500団体への導入を目指す。

富士通「G・U・M PLAY」

 このプロジェクトは17年3月に富士通とサンスターの担当者が出会ったことで始まったプロジェクト。お互い行っていることを話しているうちに意気投合し、一緒にやろうという話になったという。

 同システムを導入している熊谷理事長は問う――「日本人が80歳で入れ歯になるのはおかしいことだと気づいてほしい。皆さんは、削って詰めて、削って詰めて……という歯科医療を受けてこなかったですか? 優しくて、すぐ直してくれる“ファストフード的”な歯科医療を行うのが、いい歯医者なのでしょうか? 予防は保険が効きません。しかし、そこにいかに価値を見いだすか。私は、80歳で28本の歯を残す歯科医療を目指しています」


富士通「G・U・M PLAY」 日吉歯科診療所の熊谷崇理事長

太田智美

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