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政府がアニメ「BEATLESS」とコラボ サイバーセキュリティ啓発で 東山奈央さんが「アナログハック」を語る(1/2 ページ)

» 2018年03月05日 11時45分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は3月4日、サイバーセキュリティの啓発イベント「アナログハックを目撃せよ!2018」(東京・秋葉原)を開催した。人の心理的な隙につけ込んで機密情報を盗む「ソーシャルエンジニアリング」に近い概念をテーマにしたメディアミックス作品「BEATLESS」とコラボし、トークショーやPCの不正アクセス実演などを通して、来場者にセキュリティ意識の向上を訴えた。

photo コスプレイヤーの霜月めあさん(左)、声優の東山奈央さん(中央)、NISCの三角育生さん(右)

 政府のサイバーセキュリティ月間(2月1日〜3月18日)にあわせて開催。今回コラボしたBEATLESSは、「hIE」(エイチアイイー)と呼ばれる架空の人型ロボットが普及した22世紀が舞台のSF作品。原作は人気ゲーム「メタルギア」シリーズのノベライズなどを担当したSF作家の長谷敏司さんが手掛けた。

攻殻機動隊、SAO──アニメコラボは3回目

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 BEATLESSにコラボを持ちかけた理由について、NISCの三角育生さん(副センター長)は次のように話す。

 「サイバーセキュリティを身近に思わない方もいるだろう。しかし、ポケットの中にあるスマートフォンやゲーム機が(ネットワークに)つながっている中で無視はできない状況。今後、AI(人工知能)、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、ロボットなどがさらにつながるようになったら、世の中がどうなっていくかをよく考えることは重要だ。未来が舞台のBEATLESSとコラボすることで、サイバーセキュリティにみんなで取り組んでいこうという趣旨でイベントを企画した」(三角さん)

 NISCは、サイバーセキュリティの啓発活動において国民に親しみやすいアニメやコミックの影響力に着目。これまでも啓発ポスターやイベントでアニメコンテンツとのタイアップを行ってきた。2016年は「攻殻機動隊」、17年は「ソードアート・オンライン」とコラボした。

 「訴求力の高いメディアとコラボすることで、今まで関心を持ってもらえなかった人たちにも関心を持っていただける。引き続き、手応えを感じている」(三角さん)

人間の意識を狙う「アナログハック」

 BEATLESSのテーマである「アナログハック」とは、人間の弱みや隙につけ込んで不正アクセスに必要なパスワードなどを盗む、ソーシャルエンジニアリングと呼ばれる手法に近い概念を持つ造語だ。

 作中では「『人間のかたちをしたもの』に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けること」という設定で、人型ロボットが人間にアナログハックする場面も描かれる。

 アニメでヒロインのレイシアを演じる声優・東山奈央さんはイベントで、BEATLESSを「未来になったらどうなっているかな、という思考実験のようなストーリー」であると紹介した。

 「アナログハックは原作の長谷先生が考えられた言葉ですが、すごく前からあった言葉のように感じられるくらい、身近な概念なんだと思いました。ロボットには心がないのに、ロボットが悲しがったり痛がったりすると、人間は『かわいそう、痛そう』って思っちゃう。でも実際にロボットはそんなことを思っていなくて、人間が都合よく意味を見いだしてしまう。アナログハックはそんな現象を表しています」(東山さん)

photo アニメでヒロインのレイシアを演じる声優・東山奈央さん

 「われわれの世界ではかわいい犬型ロボットが売られてますけど、すごいかわいいって思うじゃないですか。『死んじゃったらどうしよう』となりますが、それは死んじゃったではなく壊れてしまったですよね。つい『死んじゃう〜』って思ってしまう人間の心の隙を突いているのが、アナログハックの妙なところです」

 「ロボットに限らず、目的を持って人に働きかけることを総称してアナログハックと言っています。例えばカップルがケンカしたとき、彼女が『私は悪くない! 彼氏からごめんなさいを引き出したい……!』と思ったときにわざと泣いてみるとか。この涙はアナログハックですよね!」

 「アナログハック自体が善とか悪ではなく、アナログハックを悪意を持って使うと危険ということなので、『面白そう』『かわいい』というだけでURLを開かないといったリテラシーを持って(日頃のセキュリティ意識を)臨めるといいですよね」(東山さん)

サイバー攻撃は、個人や団体を狙うアプローチにシフト

 NISCによれば、昨今のサイバー攻撃は機械的・システム的なアプローチから、特定の個人や団体を標的にして人間の心の隙を突く多様なアプローチにシフトしつつあるという。システム的な防衛の強化だけでなく、国民一人一人がセキュリティの意識を高める必要がある。

 「サイバー攻撃のやり方は大体決まっていて、不正プログラムを使うか、アプリケーションの脆弱性を攻撃されるか。それらを防いだとしても、人間がだまされてIDやパスワードのようなクレデンシャル情報を盗まれたらおしまい。人間は最後の砦です」(三角さん)

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