この記事を読んでいる方のほとんどがスマートフォンや携帯電話を持っていると思うが、あなたは「技適マーク」をご存じだろうか。端末背面やバッテリーパックを外した部分に印字されているマークを見かけたことがある人もいるだろう。
技適は技術基準が守られていることを簡易な方法で確認する(マークの有無を確認する)ための制度で、「電気通信事業法に基づく、技術基準適合認定」と「電波法に基づく技術基準適合証明」の2種がある。技適マークのない海外製スマホやBluetoothイヤフォンなどを日本で使うと電波法違反になる。
無線局(無線機器)は、許可されている周波数や出力以外の電波を出すことがないよう、検査に合格し無線局免許を受ける必要があり、携帯電話も例外ではない。しかし、既に1億6000万台を超える携帯電話全てを検査して免許を交付するのは現実的でないため、技適マークを取得すれば「キャリアが包括的に無線局免許を取得」(電波法第27条の2)でき、国内利用が可能になるというわけだ。
このように法令で厳しく禁止しているのは、許可されていない周波数の電波を発信すると他の電波と混信して通信に影響を及ぼす可能性があるため。電波法第110条では、不法無線局(無線機器)を使った場合は「一年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する」場合があるとしている。
今は通販サイトなどで海外製SIMロックフリースマートフォンやBluetooth製品を気軽に購入でき、技適マークの有無をよく確認せずにこれらの製品を使ってしまっている人もいるだろう。
電波法違反は本当に罰せられるのか、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothのような微弱な電波も取り締まる必要があるのか。日本国内の電波通信状況を監視する、総務省の工藤篤電波監視官(総合通信基盤局 電波部 電波環境課 監視管理室)、 横田幸男課長補佐(同)、深津徹課長補佐(同 認証推進室)に、技適に関する疑問や電波監視の実態を聞いた。
総務省では、電波監視システム「デューラス(DEURAS)システム」を通して24時間体制で通信に異常がないかを日々監視し、妨害電波に関する申告を受けるとそれを調査し、問題を排除する。例えば、記者が技適マークのない海外製スマホを入手し、使ってしまったとしたら、それを特定されて捕まってしまうのか。
工藤監視官は「技適なしの海外スマホなどを使って捕まった人はまだいないと思います。量刑判断となると、それは司法の場なので、われわれは『使わないでくださいね』と言うくらいです」と話す。
電波監視とは具体的に何をしているのか。工藤監視官によると、「航空、海上、警察、救急など、国民生活の安心安全のために重要な公共無線の通信を守る」のがベースにあり、混信の申告があればその原因を特定して排除しにいくという。総務省はあくまで電波の監視と妨害電波の排除をするが、取り締まりや検挙は警察が行うため、たとえ技適のないスマホを使っている人がいたとしてもすぐに動けない。申告を受け、問題が発覚した際に動き出す。
だが、例えば「技適のないスマホを使っている人がいます」とタレコミがあった場合はどう対応するのか。「全く無視はできないので、何らかの調査はするのではないかと思います。しかし、国民生活に関わる重要な支障や人命に関わることにマンパワーを割いているので、無線LANやBluetoothレベルでの違反に対して徹底できてないじゃないかというおしかりがあるならそれはもっともです。不適切な例かもしれませんが、警察に『あの人スピード違反してます』と言ってもその場ですぐ取り締まれるわけじゃないですよね。法令上『だめですよ』と禁止していますが、Gメンのような取り締まりは手が回らずにできていないのが実情です」(工藤監視官)
限られたリソースを有効に使うため、国民の生活や人命に関わる問題を優先的に対処しているというわけだ。総務省では、情報通信行政に従事する人が全国に約2000人で、そのうち約1割が電波監視関係に関わっているという。全国に約350カ所あるセンサー局を、全国約11カ所のセンター局から遠隔操作。混信の申告を受けたら、センサー局で受信した電波をモニターしたり、電波発射源の方位などを測定したりして不法無線局(無線機器)の位置などを特定。センサー局を搭載したクルマで現場に向かうこともある。
【訂正:2018年3月20日11時20分更新 ※初出時に、電波監視担当者数などに誤りがありました。お詫びして訂正致します。】
こうした混信の申告は、総務省によると年間約2000〜3000件ほどで、中には自然消滅する場合などもあり、全ての申告に対して対応するわけではない。
無線LAN、Bluetoothレベルの法令違反には手が回っていないと言っていたが、国民生活に支障をきたすレベルの妨害電波はどのようなものがあるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR