深津課長補佐は、「他人の通信に妨害を与えることもあるし、不適切な製品なら自分の通信に影響を与えることもある」と話す。満員電車でスマホがなかなか通信できない感覚を思い出してもらえるといいだろう。ぷつぷつと通信が途切れる理由が電波のせいなのか、技適マークのない製品のせいなのか、確認するのは難しい。
Bluetoothは電波法で出力値の上限を定めているが、それは日本の基準なので、他国と上限値が必ずしも同じとは限らない。「日本の基準より高い値で出力するのはフェアな使い方ではなく、周囲に迷惑を掛ける可能性がある」(深津課長補佐)
また、最近は病院で医療用の電子機器が増えている。技適マークのない機器を持ち込むと、正しくデータが取れない、異常値が出て誤った処置をされる、などの恐れもある。
このように、無線LANやBluetoothの通信でも社会に迷惑を掛ける可能性はあるが、デューラスシステムでこれらの電波は監視できるものなのか。工藤監視官は「実際に出ている電波そのものをセンサーで捉えるのは難しい」と話す。
周波数や遮蔽物などいくつもの要因が絡みあうため、「一概にどのレベルの電波なら測定できるとは言えないが、センサーで電波を受けられる可能性はある。しかし限られた帯域をほぼ万遍なく使っているので、仮に申告を受けてもその時点で合法局・不法局の判断や個体判別までは難しい」(工藤監視官)。
一番の課題は、技適マークの周知徹底だ。技適マークがどこにあるか分からない、そもそも技適の存在を知らない、という人も少なくないからだ。技適マークは、端末の背面、バッテリーパックを外した部分、スマホの設定画面などで確認できる。イヤフォンのように技適シールの貼り付けが難しい場合は取り扱い説明書やパッケージに印字されているので、大切に保管しておく必要がある。技適に詳しい一部のユーザーでは冗談交じりに「液晶が割れると技適マークが適切に表示できないので電波法に違反するのでは」と語られることもあるが、深津課長補佐は「それはないんじゃないですかね、許容の範囲でしょう」と穏やかに笑う。
「ペットボトルもラベルにごみ分別のマークがあるが、それくらい技適マークも認知度が高まってほしい。『あ、これ技適マークがない端末だからやめとこう』と個人で判断できるようになるのが理想」(深津課長補佐)
通販サイトでは技適マークのない海外端末を気軽に入手できてしまう。厄介なのが、日本の事業者を装って海外の販売店が出品している場合で、ユーザーからは技適を取得しているかどうかの判断が難しい。 総務省の「電波利用ホームページ」で技適の有無を確認できるが、技適マーク取得済み製品であってもタイミングなどで検索にヒットしないこともある。
こういった問題は総務省も認識しており、アマゾンジャパン、楽天、ヤフーなどに技適なしの商品を売らないよう呼びかけているという。法的に流通の規制はできないので、これもあくまで「お願い」になる。利用者は自分で気を付けて購入する必要がある。
工藤監視官は「皆さんの電波や通信を常に監視していると言ってしまうと、無用な不安を与えてしまう懸念もある。無線機器を便利に正しく使ってほしいという思いが伝われば」と胸中を明かした。利用者に委縮を与える運用ではなく、利用者それぞれが技適について理解し、端末を利用できる環境作りを進めていく姿勢だ。
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