共同創業者のホフマン=ケイニング氏は、自身の経験から、「場所はクリエイティビティに影響を与える」と確信していた。同氏はSpacebase創業のきっかけについて、Forbesの取材に対して、次のように語っている。
「大学卒業後の数年間は戦略コンサルタントとして働いており、際限なく行われる会議にうんざりしていた。そのうちグレーの代わり映えしない会議室に入る姿をイメージするだけで、会議が始まってもいないのにフラストレーションを感じるように」
「しかし、会議自体の有用性は感じていたのでどうにか参加者がワクワクできるような環境を作れないかと考えていた。会議にはいくつもの改善点があるが、その中でも自分が最も気になっていた『場所』を変えるようなサービスを結局は思い付いた」
Spacebaseは「Experimental」と名付けられたシリーズ動画の制作を通して、何がクリエイティビティに影響を与えうるかについて研究を行っている。
とあるエピソードでは、従来の会議室と豪華なアパートで会議を行った後の参加者のクリエイティビティを計測した結果、アパートで会議を行ったグループの方がもう一方のグループをクリエイティビティで上回ったと紹介されている。
ちなみに、オハイオ大学の研究でも、オフィス環境がクリエイティビティに影響を与えることが指摘されている他、子どもを対象にした香港理工大学の研究でも同様の結果が報告されている。
もちろん全ての会議の目的が、参加者がクリエイティビティを発揮し、新しいアイデアを出すとは限らない。しかし、Spacebaseに掲載されているような場所を試してみる価値はありそうだ。有料のスペースを使うことで、時間への意識も参加者間で共有され、会議の生産性向上にもつながるかもしれない。
Spacebaseのようなサービスが注目を集める背景として、IT業界では場所に縛られない働き方を選ぶ人が増える中で、その揺り戻しともいえる「リアルスペースへの回帰」が起きていることも挙げられる。
ホフマン=ケイニング氏も先述の取材のなかで、ビジネスにデザインシンキングのような新しいアプローチが持ち込まれるようになるうちに、今までより仕事の物理的な側面が注目されるようになったと指摘する。
そうした揺り戻しは、実際に起こった企業の動きからも見て取れる。例えば、13年に発表され物議をかもした米ヤフーのリモートワーク禁止令。その理由の1つには社員が同じ空間にいることで生まれる、偶然のコラボレーションがあったとされている。
相手と直に会わずとも働けるようになったからこそ、せっかく会うときには実りのある場にしたいもの。今後、会議を開催する際には、偶然のコラボレーションを生み出す手段として、「場所」にこだわってみてもよいかもしれない。
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