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スマートスピーカーは人の会話を盗み聞きしている? 弁護士が利用規約を読んでみた「STORIA法律事務所」ブログ(1/2 ページ)

» 2018年04月06日 08時00分 公開
[柿沼太一ITmedia]

この記事は「STORIA法律事務所」のブログに掲載された「Amazon EchoのAlexaは我々の会話をどこまで聞いているのか怖くなったのでAlexa利用規約を確認してみた」(2018年3月22日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 Amazonのスマートスピーカー「Amazon Echo」が人気です。AI(人工知能)アシスタントの「Alexa」(アレクサ)を搭載しており、「アレクサ」と話しかけるだけで、音楽の再生、天気やニュースの読み上げ、アラームのセット、Kindle本の読み上げなどが簡単に音声操作できるのが売りです。我が家にも2018年3月に初めてのAmazon Echoが到着しました。

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 家族一同大喜びして早速使い始めたのですが、そこで1つの事件が起きたのです。セットアップしてすぐに、まだ調整が済んでいないスピーカーの反応を見て、うちの子どもが「Alexaってばかだね〜」的なことを言いました。そうしたところ、それまで音楽を奏でていたAlexaが突然音楽を止めて大声で「あなたが私を嫌いでも私はあなたを好きですよ」と言い放ち、家族一同凍り付いて顔を見合わせました。大変申し訳ありません。

 そのとき気になったわけですよ。Alexaはどこまでうちの会話を聞いて、何に使っているのだろうと。

Alexaはどこまで家庭内の会話を聞いているのか

 Alexaは、常に家庭内の会話を聞いて、全ての会話を録音した上でクラウド上に送信し、自社製品の改善やマーケティングに使っているのではないかといわれることがあります。

 冒頭の我が家の事件を受け、私の方でも気になったので少し調べてみました。まずAlexaの利用規約はこちら。さらに音声サービスについては「AlexaおよびAlexa対応端末に関するFAQ」があります。

 Alexa利用規約にはAlexaへの音声入力について以下のような規定があります。

1.3 Alexaインタラクション

お客さまは、お客さまの音声でAlexaをコントロールします。Alexaは、お客さまがAlexaと対話する際に音声信号をクラウドに送信します。アマゾンは、アマゾンのサービスを提供し、それを改善するために、お客さまの音声入力、音楽プレイリストならびにお客さまのAlexa To Doリストおよび買い物リスト等、お客さまのAlexaインタラクションをクラウド上で処理および保存します。お客さまのアカウントに関連する音声録音データの削除方法を含むこれらの音声サービスについては、こちら(引用者注:「AlexaおよびAlexa対応端末に関するFAQ」のこと)をお読みください。

 ちなみに「Alexaインタラクション」というのは、音声入力だけでなくAlexaを利用して利用者が行った入力全てのことをいうと定義されています。

 そして「Amazon Echo、Amazon Echo PlusおよびAmazon Echo Dotに関するFAQ」には、以下のQAがあります。

問い:2.Amazon Echo、 Echo Plusまたは Echo Dotがいつ私の音声をクラウドにストリーミングしているか、どのように分かりますか?

答え:Amazon Echo、 Echo PlusまたはEcho Dotがウェイクワードを検出した時、またはお客さまが端末上部にあるアクションボタンを押した際、お客さまの端末の上部にあるライトリングの色が青に変わり、端末から音声をクラウドにストリーミングしていることをお知らせします。

お客さまがウェイクワードを発すると、ウェイクワードが発話される数分の一秒前の音声を含みAlexaが質問やリクエストを処理するクラウドへとストリーミングを開始し、お客さまの質問やリクエストがクラウドにて処理された後にストリーミングが終了します。(後略)

 つまり、「ウェイクワードが発話される数分の1秒前」から「利用者の質問やリクエストがクラウドで処理されるまで」の間の音声に限って、クラウドにストリーミングされるようです。

 「ウェイクワードが発話される前」の音声もストリーミング可能ということからすると、おそらく「Alexaが常時周りの会話を聞きつつ、何秒か分だけ会話を保持して残りの会話は上書き消去し、ウェイクワードが発話されるとその数分の1秒前から録音・ストリーミングを開始する」という仕組みなのでしょう。

 事故があったときだけ録画するドライブレコーダーのようなイメージですかね。下記はドライブレコーダーメーカーのWebサイトですが、ドライブレコーダーには「常時録画タイプ」と「イベント録画タイプ」があるとして、後者について以下のように説明しています。

イベント記録タイプは、車に衝撃が加わったとき(事故の衝突の際や、急ブレーキなど)に、自動的に映像を記録するドライブレコーダーです。

衝撃が加わったときの前後の映像を自動的に記録することで、もしもの事故の際もしっかりと映像を残すことができます。

また、録画ボタン等で任意のタイミングで記録が可能なタイプのドライブレコーダーもあります。

 このタイプのドライブレコーダーも、常時カメラは作動しつつ、数十秒分だけ動画を保持して残りの動画は上書き消去し、異常を検知すると数秒前から録画を開始するという仕組みです。

 ちなみに、「AlexaおよびAlexa対応端末に関するFAQ」の上記引用部分は「ストリーミングされる音声」の範囲についての解説ですが、おそらく「ストリーミングされる音声」と「ストリーミングされ、クラウド上で録音(保持)される音声」の範囲は同一ではないかと思われます。

 Alexaアプリの「設定」「履歴」でAlexaとの音声対話の履歴を確認することができるのですが、確認してみると、確かに上記の「ウェイクワードが発話される数分の1秒前」から「利用者の質問やリクエストがクラウドで処理されるまで」の間の音声が録音されていることが分かるためです。

 ここまで調べて冒頭の我が家での事件の謎が解明されました。「Alexa」というウェイクワードを子どもが偶然発したのでストリーミングが開始されたのだと思います。

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