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自動運転ベンチャーZMPの決算 上場延期の“痛み”「NOKIZAL」決算ピックアップ

» 2018年04月19日 18時00分 公開
[NOKIZALITmedia]

 ロボットベンチャーのZMP(東京都文京区)が4月19日、官報に掲載した2017年12月期(17年1月〜12月)決算公告によれば、売上高は9億9700万円(前年同期は9億8500万円)、経常損失は3億5500万円の赤字(同1億円の赤字)だった。累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は11億1300万円の赤字(同5億3800万円の赤字)。

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 ZMPは2001年設立。自動運転技術開発用プラットフォーム「RoboCar」、センサーなどを開発・販売する他、自動運転開発支援やデータ収集実験代行の「RoboTest」、物流支援ロボット(自動台車)「CarriRo」などを提供している。

photo ZMPの宅配ロボット「CarriRo Delivery」=同社リリースより

 16年12月に上場を予定していたが、顧客情報の流出を理由に延期。上場延期時は再発防止体制が整い次第、再申請の意向を示していたが、現時点では再申請していない。

 資金調達面では、17年6月に電通国際情報サービス日清紡ホールディングス凸版印刷住友商事などから15億円を調達した。

 また15年にはDeNAロボットタクシー設立していたが、運営方針の違いから提携を解消している。その後、タクシー会社の日の丸交通と20年東京五輪での自動走行タクシー実現を目指し協業を発表した

ここがポイント

 今回の決算公告によれば、売上高約10億円に対して、純損失5.7億円。流動負債3.9億円に対し、流動資産は20億円あり、思った以上に当面の資金繰りに問題はなさそうです。調達した15億円が、まだ丸々残っているイメージでしょうか。

 ただ、少し気になるのが売上高の鈍化で、前年の売上高9.8億円に対して、今回はほとんど伸びていません。上場承認時に発表した、これまでの売上と比べても伸び悩みが顕著です。販管費は前年の5.6億円に対して当年は7.9億円となっており、絞るどころか増えているので、より気になるところです。

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photo 日本取引所グループ、新規上場会社情報より

 また、資金に余剰はあるとはいえ、自動運転やロボットというテーマ性を考えると、ある程度ソフトウェアに注力するとしても、もう少し資金がほしい気はします。

 日本の花形産業といえる自動車業界では、大企業の研究開発費は毎年数千億円。トヨタに至っては、1兆円を超える規模です。自動車業界以外でもソフトバンクが、英国ARMを3兆円で買収、米国Uberに1兆円を出資と、ものすごい規模で周辺領域を抑えてきています。こうなると、ZMPがあの時点で上場できなかったのは痛かったといえそうです。

 最近、自動運転車の体験談などを読むと、相当に実現性を帯びてきているようです。一方、3月に起きたUberの自動運転車による死亡事故などを見ても、実際に一般道路を走るとなるとまだ実証データが足りていないとも感じます。

 安倍晋三首相が「2020年の東京にはきっと自動運転車が走り回っています。皆さまが動き回るのに、お使いいただく事ができるでしょう」と国際会議で豪語した自動運転技術。ZMPも実証実験を始めていますが、あと2年でそこまで到達するかは、なかなか容易ではない道のりにはなりそうです。

ZMPの過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

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《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

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