「交通量調査は、人間がする必要はあまりないのでは」――日本マイクロソフトが主催する開発者向けイベント「de:code 2018」で、そんな意見が飛び出した。都市設計では正確な交通量の把握が求められるが、いまだコストや負担の大きい人力での集計に頼ることが多い。そうした状況に着目し、AI(人工知能)の活用を提案する企業が出てきている。
提案者は、日本マイクロソフトの内藤稔さん(クラウドプラクティス技術本部 クラウドソリューションアーキテクト)。内藤さんによれば、ある交通量調査の例では、アルバイトの人件費が1日1地点当たり6万円(最長10時間)で、データの納品までに3日間かかるという。長時間の労働となると、データの精度が落ちるリスクもある。
日本システムウエア(東京都渋谷区)は、そうした課題に目を着けたうちの1社。同社はディープラーニングを活用し、人間やクルマの数をカウントする技術「CityVison」を提供している。監視カメラの映像をリアルタイムに画像解析し、人数や台数を割り出す。
その仕組みはこうだ。まずカメラの画像を複数に分割し、各画像から特徴を抽出する。例えば人間が映った画像なら、手や顔などのパーツが映っている部分は評価値を高く“重み付け”し、そうでない背景部分などは低く評価する。これらを繰り返して算出した結果を、あらかじめ学習した人間やクルマの画像データ(教師データ)と比較し、判別する。
画像解析は、カメラなど端末側(ローカル環境)で処理し、判別した結果だけをクラウド(Microsoft Azure)へと送信する。データが膨大な場合や、より詳細な分析を行う場合は、クラウド側での処理も可能だ。
AIを活用するメリットは、低いコストと高い精度だ。日本システムウエア サービスソリューション事業本部の小河原智さんによれば、同システムは月額3万円程度で運用できるという。
こうしたAIの活用を評価する動きが出てきた。これまでに静岡県熱海市が、店舗の誘致のための交通量調査で、同システムを導入した。内藤さんは「行政も配分できるコストには限りがあるので、人が集まる場所、時間帯を可視化する必要がある。そのためにはデータが正確でなければならない」と指摘する。「正確な計測はAIに任せるべき」(内藤さん)
同様の技術は、検知する対象を、人間やクルマから他のモノへと変えれば応用が利く。日本システムウェアは、建物のひび割れの検知や、人間が危険区域へと立ち入ると警告する仕組みなども手掛ける。レストランのビュッフェでは、カメラ映像から料理の種類を判別し、量が減ると厨房にリアルタイムで通知する――といった活用も見込んでいる。
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