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聴力サポートに自動外国語翻訳 もう“聞く”だけじゃない完全ワイヤレスイヤフォン最新事情(3/3 ページ)

» 2018年06月26日 07時00分 公開
[山本敦ITmedia]
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リアルタイム外国語翻訳機能を可能にした「WT2」

 もう1つ紹介したいスマートイヤフォンがある。中国のスタートアップであるTimekettle Technologiesが開発した、完全ワイヤレスイヤフォンのようなデザインの自動外国語翻訳機「WT2」だ。本稿執筆時点ではまだ「Makuake」でのクラウドファンディングが完了した段階で、7月から初期支援者に発送するという、できたての製品だ。

中国のTimekettle Technologiesが開発したリアルタイム翻訳に対応する「WT2」

 こちらのWT2は、会話する2人がイヤフォンを片方ずつ身に着けて、ペアリングしたスマホを介してクラウドの翻訳サーバと通信しながらリアルタイム翻訳を便利に使うためのプロダクト。本体は少しサイズが大きめだが、マイクやタッチセンサーリモコンが搭載されていることを考えたら納得できる。発売時点で日本語を含む10種類の言語に対応している。発売当初は、音楽リスニング機能が搭載されていない。

 モバイルアプリにペアリングした状態でイヤフォンの側面にタッチするとチャイムが鳴り、マイクに向かって話したフレーズが数秒後に翻訳されて、イヤフォンの片割れを身に着けた相手に音声で届く。さすがにイヤフォンを身に着けずに「素の状態」で会話をするようなテンポにはならないが、慣れたらストレスは感じないスピード感。むしろ翻訳系のデバイスは内容の精度が気になるところだ。

 筆者も実機で試してみたが、マイクの感度やスピーチtoテキスト変換の性能も関係していることをあらためて実感した。つまり騒がしい場所だとコマンドが正しく認識されないことがあるし、話しかける時の滑舌も大事だ。コマンドが正しく伝われば、返される翻訳はまあまあ的を射ているし、応答の内容がスマホの画面にチャット形式で表示されるので、目で会話の流れが追えるので安心だ。

チャット形式で会話をリアルタイムに翻訳。結果を音声だけでなくスマホの画面からも確認できる

 WT2のような音声インタフェースを活用した自動翻訳機能を搭載するイヤフォンは、今後はGoogleアシスタントのプラットフォームにも取り込まれるようだ。また韓国のNAVERもClovaをベースにした翻訳エンジンを搭載するスマートイヤフォンを開発中。こうしたデバイスが普及する段階で、おそらく課題になってくるのが、自分が全く分からない言語を話す相手との会話に使った場合の正誤確認の手段だろう。

LGが2018年のCESに出展した音声入力によるGoogle翻訳に対応したスマートイヤフォン。こちらも商品化が待たれるところ

 こうした製品は、自動翻訳エンジンや音声認識周りの精度と信頼性が100%でないかぎり、自分の言葉が相手に正しく伝わらず、不快な思いをさせてしまう危険性がつきまとう。WT2のスマホアプリのように、音声による会話の流れを視覚的にもチェックできる何かしらの補助的なデバイスも求められることになるかもしれない。

ヘルスケア系のサービスとの連携も

 今回は音楽を聴くだけじゃない、完全ワイヤレスイヤフォンタイプの新しいスマートイヤフォンをいくつか紹介した。また秋ごろにはGoogleアシスタントやAmazon.comのAlexaを搭載するイヤフォンもいくつか商品化されそうだ。製品が出そろってくれば、現在スマートスピーカーを使って音声コマンドで操作できるスマート家電がイヤフォンからもコントロールできるようになるかもしれない。

 他にも心拍センサーや加速度センサーを内蔵し、スマホアプリと連携しながらヘルスケア用途に活躍する完全ワイヤレスイヤフォンも今年の後半に向かってブレークする兆候が現れている。米国を中心に、スポーツによる健康増進やヘルスケアデバイスとして完全ワイヤレスイヤフォンに期待する向きは強い。Appleが次期AirPodsの新製品でどのような手を打ってくるのかにも注目したい。

 人の体に密着して、しかもケーブルが体に触れるストレスから解放される完全ワイヤレスイヤフォンという新しい「スタイル」が普及したことによって、これからはイヤフォンが音楽を聞くためのものだけに止まらない進化を遂げそうだ。

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