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「Fate/Grand Order」のガチャは、なぜ“よく回る”のか? マスターの1人として考えてみた「NOKIZAL」決算ピックアップ(番外編)(2/4 ページ)

» 2018年07月14日 10時00分 公開

“安室奈美恵”も“安室透”もしのぐ? サーヴァントの魔力

 FGOに登場するサーヴァントは、TYPE-MOONの代表である武内崇氏をはじめとしたイラストレーターが生み出すかわいい(もしくは格好いい)イラストや、人気声優によるキャラクターボイスといった要素が魅力です。しかし、それだけではガチャを積極的に回す動機にはならない気がします。

photo TYPE-MOONの代表である武内崇氏がデザインを手掛けたサーヴァント「アルトリア・ペンドラゴン」

 なぜなら、レッドオーシャンと化したスマホゲーム業界では、それだけでは差別要因とはなりづらいためです。では、FGOならではの魅力とは何なのか。もちろんさまざまな要素が絡んでくるとは思いますが、今回はキャラへの愛着という視点で、下記の理由を挙げてみました。

(1)骨太で魅力的なストーリーに裏打ちされたキャラクター

 ご存じの方も多いと思いますが、FGOのベースになったFate/stay nightは、成人向けゲームでした。にもかかわらず、後にネット上で“Fateは文学”という言葉が生まれるほど、作り込まれた物語やキャラの魅力は、当時から熱狂的なファンを生み出していました。TYPE-MOONは、Fateシリーズ以外にも「空の境界」や「月姫」といった作品でファンの支持を獲得しており、長年培われた物語を構築するノウハウは、FGOでも存分に発揮されています。

 最近はやりの攻略手順を定めない「オープンワールド」のゲームとは違う、昔ながらの一本道のゲームは丁寧に構築できれば、受け手の個別キャラクターへの思い入れを大きくできる魅力があります。例えば「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」の花嫁選びに真剣に悩んだり、「ファイナルファンタジーIV」のパロムとポロムの石化に胸を熱くした人も多いのではないでしょうか。そうしたキャラへの熱量が、ガチャに注がれる感覚です。

(2)相性バトルによるインフレ防止、時間のかかる育成で思い入れが増大

 Fateの作品設定の面白い点に、召喚に応じるサーヴァントがセイバー(剣)やアーチャー(弓)、ランサー(槍)といったクラスに分かれて戦うということがあります。各クラス自体に強弱はなく、例えば、剣は槍に強いが弓に弱い、弓は剣に強いが槍に弱い、槍は弓に強いが剣に弱い――といった相性が存在します。これにより、バトルをメインにしたゲームにありがちな、「後から登場するキャラは強くなければならない」という“インフレ”がある程度解消され、ユーザーの“課金疲れ”を軽減しています。

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 例えるなら、最初に入手した“グー”は後から出た“グー”より弱いところもあるけれど、強い“チョキ”よりはいつまでも強いので投資を無駄に感じない――というところでしょうか。加えて、ゲーム内イベントによっては、初期のサーヴァントを使うと有利になったり、新しいクラスが追加されたりと、チーム編成を工夫できる戦略性が、満足感の継続に貢献しているといえます。

 また、他のスマホゲーム同様、FGOでも入手したサーヴァントは基本的に育成(能力をアップさせること)が必要になります。しかし平均的なゲームと比べると、育成に必要なアイテムを集めるには、ある程度、敵を倒し続けなければいけないなど、手間がかかることが多いのです。そのため「手間のかかるサーヴァントほどかわいい」という愛着を生み出すことに成功しているように思います。

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